定年退職者が後から振り返って最も後悔しているのは、20代や30代ではなく40代だった――。そして、その後悔が最も集中しているのが「時間の使い方」。1万人のインタビューを通してわかった、仕事に家庭に多忙を極める40代ならではの上手な時間の使い方とは?『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』から、一部を抜粋して紹介する。(初出:2016年5月26日。初出時より再構成いたしました)
40代という人生最大の分かれ道
40代とは、どのような10年でしょうか? 人生80年とすれば、ちょうど人生の折り返し地点ともいえる年代ですが、現在リタイアした多くの諸先輩たちが、40代が良くも悪くも人生最大の分かれ道だったと振り返っています。40代こそ、人生最大の転換期だったと──。なぜでしょうか?
40代は、仕事でいえば、やっと自分の裁量で仕事ができるようになり、自分のやりたかったことや、個性やセンスが発揮できるようになる年回りです。しかし、自由裁量といいながらも、自分の仕事以上に、部下やチームの力を最大限に発揮させるマネジメント力が求められる年代です。経営方針もそのまま部下に伝えるのではなく、部下にわかるように噛み砕いて、その上でやる気が出るようなマネジメントをしなければなりません。
それまでとは違うスキルが求められる中で、出世レースは最終局面を迎えます。関係部門や上司との調整も多くなり、上下左右の板バサミ、本人が望むとも望まなくとも、物事をスムーズに進めるためには、社内政治に頭を使わざるを得ないのが40代の特徴といえます。
一方で、家庭でも40代には大きな変化が起こります。子どもは育児から教育に変わり、子育ても一段落したことで仕事に本格的に復帰する女性が多くなるため、夫婦関係も新たな局面へと突入します。共働きが当たり前の時代ですから、仕事一辺倒ではない、家事の分担や家庭マネジメントを上手にできるスキルが一層求められます。
また、それまで他人事だった親の介護がリアルに自分事となる年代です。子どもの教育をはじめ、何かとかかるお金や、徐々に減っていく気力・体力に悩みながら、自分らしい住まいのあり方や暮らし方も再考していく段階です。
つまり、会社では上司、部下、同僚、関係部門、取引先、家庭では子ども、親、配偶者という、公私にわたって他人に振り回される10年であり、その一つ一つの決断が、人生の後半戦を大きく左右するのが40代なのです。
40代は30代の延長ではありません。それまでとは違う能力が求められることで、マラソンの折り返し地点のように、走る方向が180度変わる、人生の分かれ道です。これまでの積み上げだけでは通用せず、新たに生まれ変わる覚悟が求められるのです。
40代が最も後悔するのは「時間の使い方」
私は大学を卒業して新卒でリクルートに入社、その後アメリカにMBA留学して、31歳でオーダーメイドの企業研修会社を創業、今年で22年目を迎えます。
リクルートでは新規事業の営業部に配属され、毎日、中小企業の経営者や大手企業の部長に会うのが私の仕事でした。新規開拓の営業の仕事は雑談が多く、これ幸いに成功するための仕事のコツや人生訓、処世術などについて、会う人会う人に聞きまくっていました。
創業社長や上場を果たした経営者、大手企業の部長までなる人の話はとにかく面白く、特に成功談より失敗談から多くの学びを得ました。成功談は巷にあふれていますが、失敗談はあまり世に出ません。そして、話を聞けば聞くほど、成功談は人それぞれですが、後悔していることは驚くほど共通しているという事実に魅了されました。
それは、まさに「人生の法則」ともいえるもので、彼らが振り返って「こうすればよかった」と後悔していることこそ、逆に人生を後悔しないために「やるべき法則」だったのです。リクルート社内の先輩を含めると、諸先輩のアドバイスや後悔話の数は、ゆうに1万人を超える計算になります。
最も驚いたことは、彼らの後悔が40代に集中していたことです。特にリタイアした人たちが後から考えて「人生の分岐点」だったと考えているのが、20代や30代ではなく、これまであまり語られることのなかった“空白の10年”ともいえる40代だったことでした。
そのエピソードやアドバイスをリストにしてまとめたのが『40代を後悔しない50のリスト』という本です。この本は日本だけでなく台湾、韓国でも出版され、累計16万部を超えるベストセラーとなり、諸先輩たちが人生をかけて体得した集合知を多くの読者と共有することができました。
その後も「30代」「結婚」と年代やテーマを変えて本にまとめてきましたが、実は40代という年代に限れば、最も後悔しているテーマこそ「時間」だったのです。職場でも家庭でもやるべきことを山と抱える40代にとって、最も扱うのが難しく、悩みが多いのは時間の使い方です。では、なぜ40代の後悔は、時間の使い方に集中するのでしょうか?