毎日やることばかりで、自分のやりたいことに時間が取れない。そう悩む人は多いだろう。そんな人が、本当にやりたいことに集中するには、今の延長でさらに頑張るだけでは難しい。生活や習慣を改善していくためには、「減らす」「増やす」を調整しなくてはいけないのだ。習慣化のプロとしてこれまで5万人を指導し、1000人以上をコーチングしてきた古川武士氏が、心を整えるための「書くメソッド」を体系化した書籍『書く瞑想』から、一部を抜粋して特別公開する。
不要なことを減らす、なくす
片づけの本質は、整理整頓ではなく、「減らす、捨てる、手放す」ことにあります。
心の片づけ、スケジュールの片づけも同じで、捨てること自体に、片づけの難しさがあるのは言うまでもありません。
嫌われたくないから、適当にしていると思われたくないから、失敗したくないから、安心したいから、後悔したくないから、という心理的な要因が手放すことを躊躇させます。
さらに、生活を改善していくためには、不要なものを「捨て」た上で、必要なものを「増やす」ことが大切です。
「断捨離」で有名なやましたひでこさんは、断捨離は地道なトレーニングの繰り返しで、トライ・アンド・エラーを繰り返すこと、失敗してもいいから行動していくことを推奨しています(*1)。
私も心の片づけは、地道にトライ・アンド・エラーを重ねて、少しずつ変えていくことをお勧めしています。
自分との対話は一朝一夕で完了するものではなく、ずっと向き合っていくプロセスです。
一足飛びにやることやこだわりを減らす、なくすという結果を出そうと考えるのではなく、トライ・アンド・エラーを繰り返し、地道に気づきを重ねて良い状態に向かっていくことが大切です。
ただ、どうしても抽象的な話になるため、私自身が人生でいかに大切なことを「増やし」、「減らす」ことと向き合ってきたかの例を紹介しましょう。
人生で大切なことに集中する
私は、16年前の28歳のとき、「雇われない生き方」をしたいと考え、プロコーチとして独立しようと一念発起しました。
それまで勤めていた会社は日本を代表する大企業であり、給与にも恵まれ、評価もしていただいていました。
しかし、仕事にどうしてもやりがいと意味を見出せず、自分の強みは眠ったままのように感じていました。
今のままでは情熱の源泉につながるのは難しい、自分らしさを生かすためにはどうすればいいか悩み抜いた挙句、見つけた方向性が「独立・起業」だったのです。
決意から1年以内に独立することを決めていたので、日々の仕事をこなしながらの起業準備はハードでした。
早朝と夜はコーチングのスキルトレーニングおよびセッション練習です。週末はコーチングの勉強会に通い、交流会と呼ばれるものにも積極的に参加して人脈を広げようとしました。
しかし、通常業務は、夜21時まで働く生活は変わらず、このままではコーチングでの独立は遠のくばかりだと感じました。
自分にとって「今何が大切な時間なのか」を改めて問い直し、業務を効率化し、仕事は19時までに終わらせると決めて、勇気を振り絞って残業を減らしました。
先輩や上司より早く帰るのは気がひけるものです。周りから何を言われるか心配でしたが、さんざん内省して理想と目標・行動を明確にしたことでコミットできました。
そしてコミットした後は、余計な残業、だらだら時間などをすべて捨てることにしました。通常業務をいい加減にやったわけではなく、工夫して高密度化していったのです。
こうして1年後に無事独立して、今は独立16年目、紆余曲折ありながらも今こうして自分らしいと思える人生を歩んでいます。
長くなりましたが、自分の人生を変えるには価値観を探り、理想と行動を明確にして、そこに時間を多く取ることです。
ただし、1日は24時間しかありません。何かの時間をなくしたり、圧縮して減らしたりすることを同時に行わなければなりません。
日々は、膨大なToDo、山積みの問題、返信すべきメール、家族や上司としての役割など、「やるべきこと」にますますスケジュールが占有されてしまいます。
ただ、貯金と同じで、余ったら貯金しようではダメで、「先に何のためにいくら貯める!」という願望と決意が重要なのです。
これは私のストーリーですが、これからはあなたのストーリーを探っていきましょう。
幸せは人それぞれです。それが目標達成という人もいれば、平和と安心を大切にして平穏に過ごしたいという人もいます。それぞれに大切にしたい価値観は違います。
心を整えるためには、自分にとって大切なこと、不要なことを明確にすることが欠かせません。
(本原稿は『書く瞑想──1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』からの抜粋です)