「オーナーとしての優勝は、一ファンとしてのそれとは違って格別なものでしょう」とよく聞かれますが、そうでもありません。私は肩書こそオーナーでしたが、心情的には一ファンの方が強い。負けているときにテレビに向かってブツブツ言っているのは、ファンの皆さんと同じです。

 95年の日本シリーズはヤクルトスワローズ(現・東京ヤクルトスワローズ)に1勝4敗で負けてしまいましたが、日本一へのチャンスは翌年訪れました。オリックスは96年にパ・リーグ2連覇を果たし、日本シリーズで長嶋茂雄監督率いる巨人と相まみえたのです。

 東京ドームでの第1戦、9回の土壇場に2点差を追いつかれて3対3で迎えた延長10回。イチロー選手が打席に立ちました。ここで見事なソロホームラン。目の前で見て、快哉を叫びましたね。長嶋さんには土井正三監督を招へいしたときにお世話になりましたが、ここは負けられません。東京ドームでの最初の2戦を連勝するという最高のスタートになりました。

 10月24日、オリックスの3勝1敗で迎えた第5戦。本拠地であるグリーンスタジアムでの試合を制し、球団は19年ぶり4度目の日本一を決めました。1年前には味わえなかったビールかけ。ようやくその味が分かりました。

 買収後にずっとAクラスを続け、リーグ優勝を果たし、翌年には日本一に――。こんなストーリーがあれば、その後も輝かしい未来が続くと誰だって思いますよね。ここから次の優勝まで四半世紀の年月がかかるだなんて、誰も想像しなかったでしょう。