大谷がマイケル・ジョーダンのようなスポーツファン以外にも知られるスーパースターになる可能性は十分にあると、「ロサンゼルス・タイムズ」記者のディラン・ヘルナンデスと、「ジ・アスレチック」記者のサム・ブラムは予測する。今、大谷はアメリカでどのように支持されているのか、そしてこれからメジャーに与える影響とは。『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』から一部抜粋して解説する。
※記事中の「トモヤ」は在米ジャーナリストの志村朋哉さん。3人による会談は昨年中に行われました。
大谷が変える日本人観
トモヤ 野球は正しい方向に向かっていると思う?
ディラン グローバルな成長は不可欠になってきている。米国内では、すでに最高のアスリートを他のスポーツにとられているから。そういう意味では、日本では身体能力の高いアスリートの多くが野球を選んでいるのは良いこと。韓国も似ている。ドミニカ共和国などいくつかの中南米の国でも、トップアスリートが野球を選んでいる。
各球団が地元ファンからの支持を基盤に成り立っていることが幸いして、メジャーリーグがなくなるってことはないと思う。各都市は、そこの野球チームと深い関係を築いているから。たとえばロサンゼルスでは、毎試合5万人が入るくらいドジャースと強い結びつきがある。
でも、全米で広く知名度や人気があるスターがいないのは不安材料ではある。レブロン・ジェームズやトム・ブレイディやパトリック・マホームズのような。それに労使関係の悪さが加わる。メジャーリーグには、プロスポーツで一番強力な選手会があるけど、オーナー側との間に長年蓄積された不信感と敵対意識がある。同じ船に乗っていることを理解していないかのような。どこかのタイミングで、以前のようなストライキが起きて、1年くらい試合が中断されるようなことになれば、大打撃を受ける可能性はある。全米レベルのスターがいないことで、他のスポーツよりも脆さがあると思う。