定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

退職日が1日違うだけで、40万円以上ももらえるお金が違うことがある?Photo: Adobe Stock

「失業手当」と「高年齢求職者給付金」ではもらえる額が大きく違う

「昨日会社を退職しました。そして、本日65歳の誕生日です。明日ハローワークに行ってきます!」

 ご近所の飲み友達であるAさんのSNSの投稿を見て、私はがっかりしてしまいました。
「事前に相談してくれてたら、『失業手当』がもらえたかもしれないのに……」。

 会社を辞めても再就職の意欲のある人がもらえる「失業手当」。実は、この「失業手当」、65歳以上で退職した人はもらえないのです。
65歳以上で退職した人がもらえるのは「高年齢求職者給付金」。名前も違いますが、もらえる金額も実は大きく違うのです。

 定年退職の場合『失業手当』は最大で150日給付されますが、『高年齢求職者給付金』は、最大50日。給付日数が3倍も違います。
 もらえる金額がどのくらい違うのかというと、たとえば退職前の月額が給与50万円で、20年以上働いていた場合、「失業手当」であれば110万円ほどもらえますが「高年齢求職者給付金」になると35万円程度となってしまいます。

「でも、Aさんは誕生日の前日に退職しているから、64歳で退職しているのでは?」と思われるかもしれませんが、失業保険の年齢は、実際の誕生日の前の日に上がることになっているのです。かわいそうなAさん。あと1日だけ退職日を早めてもらえれば、手当の手取りは全然違っていたのに……。知っていると知らないとでは、こういう差が出てきてしまうものなのです。

65歳の誕生日の前々日に退職、誕生日以降にハローワークに行くのがベスト!

 失業手当をより多くもらうためには、65歳になる前に退職するほうがいいのですが、気を付けなければいけないのが、64歳までもらえる「特別支給の老齢厚生年金」をもらっている人と年金を65歳になる前にもらい始める「繰り上げ受給」をしている人です(ここでは以下両方を合わせて「老齢年金」といいます)。

 ここは重要ポイントですが、64歳までは「老齢年金」と「失業手当」はどちらかしかもらえません。そのため、64歳のうちに失業手当の手続きをすると、「老齢年金」はストップしてしまいます。ストップした分は、あとからはもらうことができないので年金がストップする期間はなるべく短く、できればなくしたいところです。

 そのためには、「65歳になる直前(誕生日の前々日がベスト)に退職」をして、失業手当をもらえるようにしておき、「65歳になってからハローワークに手続きに行く」のがベストな方法です。これなら64歳のうちにもらえる予定の「老齢年金」も期限いっぱいもらえるため、失業手当と年金を両方もらうことができます。

 ただし、退職日をずらしてもらうことで、退職金や給与が下がってしまったり、自己都合での退職扱いにされて、給付制限などがついてしまっては、本末転倒です。会社との調整はしっかりしていただきたいと思います。

 *本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。データは発売時(2023年8月)のものを基準にしています。