ルイ・ヴィトンのパリ本社に17年間勤務しPRトップをつとめ、「もっともパリジェンヌな日本人」と業界内外で称された藤原淳氏が、パリ生活で出会った多くのパリジェンヌの実例をもとに、「自分らしさ」を貫く生き方を提案したのが、著書『パリジェンヌはすっぴんがお好き』。著者が言うパリジェンヌとは、「すっぴん=ありのままの自分」をさらけ出し、人生イロイロあっても肩で風を切って生きている人のこと。この記事では、本書より一部を抜粋、編集しパリジェンヌのように自分らしく生きる考え方をお伝えします。
すっぴんになってみて一番驚いたのは、ほとんど反応がなかったこと
すっぴんで登場するには、ある程度の覚悟が必要です。長い間マスクをしていた経験がある人ならわかると思います。思い切ってマスクを外し、素顔をさらけ出すのは案外勇気のいることです。「どう思われるかな」などという、いらぬ心配をしてしまうからです。
すっぴんになってみて一番驚いたのは、ほとんど反応がなかったことです。私がノーメイクで登場したことに周りが驚いていないのではなく、気が付いていないのです。思いっきり拍子抜けでした。髪型を変えて本人はソワソワしているのに、周りに全く気が付いてもらえなかったという、あの経験に似ています。
子どもの頃から「人に見られている」と勝手に思い込む傾向がある、自意識過剰な私ですが、「誰もあなたを見ていません」という衝撃の事実に向き合わされた瞬間でした。
自分で思っているほど、誰も私のことを見ていない、気にしていない、注目していないということがわかり、思わず苦笑してしまいました。「自分は浮いている」と思って一生懸命溶け込もうとしていた私ですが、無駄な努力に過ぎなかったのです。
自分の素顔を一番見ていないのは、実は自分自身
そして周りの人は素顔の自分をすんなり受け入れてくれた。その事実に、私は「気張る必要は何もないのだ」とはっきり認識することが出来ました。ソフィアの言う「スイッチ・オフ状態」になることができたのです。なんだか嬉しくなった私はソフィアに、
「今日、ノーメイクで出勤なの!」
そうアピールしてみましたが、彼女はこちらをチラッと見ただけ。「だから何?」という顔をしています。
「自分の素顔が好き!」と断言することができる人、少ないと思います。それはなぜかといえば、日常生活の中で自分の素顔を見つめる機会が少ないからです。自分の素顔を一番見ていないのは、実は自分自身なのです。
見慣れていないのですから、たまに見ると欠点ばかり目についてしまいます。幻滅してしまう人もいると思います。頭の中で築き上げていた理想の自分とのギャップにガッカリしてしまうのです。
悪くないわよ、ノーメイクも。そっちの方がジュンらしいかも
私もそうでした。のっぺりした顔、小さすぎる鼻、長すぎる顎……。嫌なところを挙げたらキリがありません。日焼け、シミ、ニキビ……。気になることだらけで、それまでの私は、欠点や欠陥を補う努力にエネルギーを費やしていました。
その上、毎日くっきりした目鼻立ちのパリジェンヌに囲まれて生活していたので、
「アイライン、睫毛のビューラー、マスカラは欠かせない!」
そう思い込んでいました。
けれども、どう転んでも私は日本人。彫りが深いフランス人と比べても始まりませんし、張り合う意味は全くありません。スイッチ・オフ状態になってみて初めて、私は自分が取り繕うことばかりにエネルギーを使っていたことがわかりました。空回りしていたのです。
何を思ったのか、隣席のソフィアが突然書類から顔を上げ、私に向かって言い放ちました。
「悪くないわよ、ノーメイクも。そっちの方がジュンらしいかも」
そう言われた瞬間、心がふわっと軽くなったのを今でもよく覚えています。なんだか気持ちが吹っ切れたのです。
大胆な整形でもしない限り、素顔というモノはそうそう変わるものではありません。個性もしかりです。いいところも悪いところも含めて全部、自分。一生付き合っていかなければならないモノです。
すっぴんのポイントは、「できるだけ取り繕わずにありのままでいること」
しかし、どう付き合っていくかは自分次第。ありのままの自分をさらけ出してみると、「私って案外、イケてるかも」という気になってくるから不思議なものです。自分に愛着が湧いてくるのです。こんなことは初めてでした。
そうは言っても、「突然ノーメイクで出社なんて、大胆すぎる!」そう思うかもしれません。今まで素顔をさらけ出さずに生きてきた人にとっては、「そんなことムリ!」と叫びたくなる気持ちもよくわかります。一切取り繕いが利かないのですから最初はとても焦ります。
でも大丈夫です。すっぴんのポイントは、「できるだけ取り繕わずにありのままでいること」です。ここで大事なのは、自分をさらけ出す覚悟です。必ずしも日常生活をすっぴんで過ごす必要はありません。実は、もっと手軽な方法があります。
それはパリジェンヌが当たり前のように毎日やっていることです。そしてそれは、誰でも、いつでも、どこにいてもできることです。
※本稿は『パリジェンヌはすっぴんがお好き』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。