ルイ・ヴィトンのパリ本社に17年間勤務しPRトップをつとめ、「もっともパリジェンヌな日本人」と業界内外で称された藤原淳氏が、パリ生活で出会った多くのパリジェンヌの実例をもとに、「自分らしさ」を貫く生き方を提案したのが、著書『パリジェンヌはすっぴんがお好き』。著者が言うパリジェンヌとは、「すっぴん=ありのままの自分」をさらけ出し、人生イロイロあっても肩で風を切って生きている人のこと。この記事では、本書より一部を抜粋、編集しパリジェンヌのように自分らしく生きる考え方をお伝えします。

日本のファッション雑誌では人気だけれど、フランスの雑誌には絶対ないぺージとは?Photo: Adobe Stock

意外なことに、洋服はブランド物をまとっている人はあまりいません

 パリのポン・ヌフ通りにあるルイ・ヴィトン本社には、毎日2000人の社員が出勤します。

 私は直の上司となる金髪美人のパリジェンヌについて、広報部の挨拶回りをしていました。右も左もわからないまま、あちこち連れ回され、紹介される人の顔と名前を一生懸命覚えようとするのですが、ほとんどの社員はこちらをチラッと見て口先ばかりの挨拶をしておしまい。顔さえ上げてくれない人ばかりです。

 チラ見の際、私は頭の上からつま先までチェックされているのを見逃しませんでした。
「どんな奴が入ってきたのか」
と、値踏みをされているのです。

 私は途中から名前を覚える無駄な努力をやめ、こちらも相手のルックスをチェックすることにしました。意外なことに、バッグこそ、スタッフ全員が自社製のモノを普段使いしていますが、洋服はブランド物をまとっている人はあまりいません。

 学生のような恰好をしている人。スポーツ・ウエアを着ている人。カジュアルなワンピースを着ている人……。実に千差万別、多種多様です。皆が皆、オシャレというわけではありません。一部の男性はスーツにネクタイですが、女性はスーツをカチッと着ている人はいません。何を着てもオッケー。そんな空気が流れています。

人真似をして周りに同調するという悪い癖がムクムクと頭をもたげていました

 コーポレートPRとして採用された私は、オープンスペースの一角にデスクを割り当てられました。周りの同僚も思い思いの恰好をしています。優しく声をかけてくれる人などいません。デスクにとりあえず座ってみるも、私は間違ったところに来てしまったような違和感を感じていました。なんだかひどく場違いなのです。一人だけ浮いているのです。

 一刻も早く溶け込みたい……。そういう切なる思いから、私はまず周りのパリジェンヌ達の服装を観察することにしました。隣席の同僚はブリジット・バルドー似の小悪魔風の若い女性ですが、群を抜いて垢抜けています。ところがよく見てみると、ZARAやH&Mのような、安月給でも買うことができる洋服をうまく着回しているのです。

 早速私も近所のZARAに走り、同じような服を買いだめしました。広報部長に言われていた「ありのままの自分で勝負しなさい」という大切な教えはどこへやら。人真似をして周りに同調するという悪い癖がムクムクと頭をもたげ、私の視野を狭くしていました。