ルイ・ヴィトンのパリ本社に17年間勤務しPRトップをつとめ、「もっともパリジェンヌな日本人」と業界内外で称された藤原淳氏が、パリ生活で出会った多くのパリジェンヌの実例をもとに、「自分らしさ」を貫く生き方を提案したのが、著書『パリジェンヌはすっぴんがお好き』。著者が言うパリジェンヌとは、「すっぴん=ありのままの自分」をさらけ出し、人生イロイロあっても肩で風を切って生きている人のこと。この記事では、本書より一部を抜粋、編集しパリジェンヌのように自分らしく生きる考え方をお伝えします。

「人にどう思われているか不安」な人がラクになる、【パリジェンヌの考え方】Photo: Adobe Stock

天下のルイ・ヴィトンの面接。何を着ていけばよいの?

 私を待ち受けていたのは、人事課のお兄さんでした。ピタピタのジーンズを穿きこなし、生足にスニーカーです。薄暗いオフィスには昼間からアロマキャンドルがくゆり、バラの香りが立ち込めています。アシスタントが持ってきてくれたのは、陶器のデミタスカップに入ったエスプレッソです。彼女は紫色のレギンスに肩が出る大きめのTシャツを合わせ、そのまま踊り出しそうな恰好をしています。それぞれに個性的です。

 それもそのはずです。私が面接に来たのは、ただの会社ではありません。天下のルイ・ヴィトンです。ファッション業界です。日本式に暗色のスーツにビシッと身を固めてきた私は完全に場違い。

(もうこの扉をくぐることはないだろう……)

 そう思いながらポン・ヌフ通りにある本社を後にした1週間後、アロマキャンドルのお兄さんから連絡がありました。3日後、広報部長との面接に来てくださいとのことです。喜びもそこそこに、私は頭を抱えてしまいました。何を着て行けばよいのか、全くわからなかったのです。

パール・グレーのカラー・コンタクトをつけて面接に

 3日間思案した結果、私はタイトスカートにシルクのブラウスを合わせ、大きめのベルトをつけてイザ、出陣。前回、本社の廊下ですれ違った、いかにも仕事が出来そうな女性のルックスをそっくりそのまま、真似てみたのです。

 当日、私はさらにパール・グレーのカラー・コンタクトをつけて面接に挑みました。つけるだけで自分がちょっと「ミステリアスな女」になったような気がして、当時お気に入りで時々つけていたものです。

 広報部長のオフィスはセーヌ川を一望することができるガラス張りの大きな部屋でした。オフィスというよりはインテリアのショールームのようです。革張りのソファを勧められ、すみっこにちんまりと腰を掛けた私は、一通りの挨拶を交わした後、自己紹介を始めました。