陰謀論、反LGBTQ運動、反ワクチン、ロシアの反リベラル思想、トランプ信者、白人至上主義、気候変動懐疑論…フェミニストで女優の母を持つジャーナリスト、ユリア・エブナー氏は、大衆化した過激主義の現状を、組織への潜入捜査で解き明かしてきた。日本で待望の新刊が発売する直前に、英国で独占インタビューを敢行した。【前後編の後編】(国際ジャーナリスト 大野和基)
>>前編『女性記者が極右団体に潜入「過激主義者が突然オフィスに…」と告白』から読む
――これまでの潜入捜査で最も恐ろしいことは何でしたか。
最も印象的だったのは、これらのムーブメントの多くが、コミュニケーション戦略に長けていたことです。例えば、彼らはZ世代をリクルートすることに真剣でした。白人ナショナリスト運動であるGeneration Identityに潜入した際、英国最大の白人ナショナリスト団体の創立者、マーク・コレットと話ができたのですが、このムーブメントは、若者をグルーミングし、急進化させる極めて強力かつ巧妙な戦略を持っています。
例えば、マーク・コレットは、政治やイデオロギー的な側面に関心のない若者、未成年者をリクルートすべく、オンラインゲームのトーナメントを開催していました。彼らのチャットグループの投稿を見ると、自分たちのことを“ヒトラー”と呼ぶと同時に、「もう寝なきゃ。明日の朝、学校に行かなくちゃいけないよ」などと書かれています。大人が想像する以上に若い層、というか子どもが巻き込まれており、深刻なことが分かりました。
――どんなエリートでも、人格者でも、陰謀論や過激主義にはまってしまう可能性はあるのでしょうか?
はい、誰でも過激主義のムーブメントの餌食になり得ます。特定の年齢、特定の社会経済的バックグラウンド、特定のジェンダーの人が過激主義に陥りやすいとは思いません。
潜入取材の中では、教育レベルが非常に高い人、すこぶる恵まれた環境で育った人にも出会いました。一方、人が過激主義思想やコミュニティーに陥る時に共通するのは、人生で非常に弱くなる時です。不安やフラストレーションを集団的ナラティブにつなげることで、解決策をもらえるような気持ちになります。でも、それは非常に危険です。
――日本も関係する過激主義についてリサーチしたことはありますか?