「CIAなら公安を瞬殺できる」元公安が語る“スパイ天国”日本のお粗末な現状勝丸氏が会ったMI6はアストンマーチンには乗っていなかった(写真はイメージです) Photo:PIXTA

『VIVANT』監修を務めた元公安警察の勝丸円覚氏。本当に別班は存在するのか。ドラマの反響を受けて、先日「別班」関係者から接触があったという。さらに、長年にわたって諜報の世界に身を置いてきた勝丸氏が「存在感の薄いMI6」「CIAが最強の諜報機関である理由」「人手不足が深刻な日本のスパイ対策」などスパイに関する驚きの事実を教えてくれた。(セキュリティコンサルタント 勝丸円覚)

「別班」は存在する

 テレビドラマ『VIVANT』(TBS)が話題となり、自衛隊内に存在するとされる「別班」にも注目が集まりました。先に答えを言ってしまうと、別班は存在します。というより、いないとおかしい。

「別班」という名称で存在するかどうかは別として、HUMINT(観察や判断、接触によって情報を得ること)を駆使する非公表の諜報組織は自衛隊内に存在することは確かです。

 ドラマの2話目の放送が終了して、「別班」と世間から認識されている組織の後継組織に所属していたという方からコンタクトがありました。怪しいなと思ったので、防衛省の情報本部にいた人なら知っている内部情報を当てたところ、すべて知っていたので嘘ではないとわかりました。

 これは情報本部にいた人たちから証言が取れているのですが、別班になるためには、まず陸上自衛隊情報学校における「心理防護課程」を受ける必要があるそうです。その中で特別に優秀だった人が、さらに特別な研修を受けて一度自分の所属に戻った後、防衛駐在官として在外公館に出たり、あるミッションがあるときに数名集まったりして、看板も掲げずに活動する、というの仕組みのようです。

 私が監修を務めたドラマ『VIVANT』では、別班も激しい戦闘シーンや世界を股にかけて躍動する姿が描かれていましたが、実際の仕事は地味で辛いものばかりのようです。それは、公安でも同じことが言えます。

 業務のメインは、尾行と監視。対象にバレないように後をつけて、様子を伺うことです。数年追いかけても、何も起きないことすらあります。自分が公安になる前は、もっと華やかな世界だと思い込んでいました。とにかく内部の情報がすくなかったので、スパイ映画のイメージをそのまま持ち込んでしまったのです。入った瞬間にそんな幻想は打ち砕かれてしました。

 それでも辞めなかったのは、こういう仕事やスキルが任務を遂行するために必要だと割りきることができたからです。相手を知らずして諜報戦で勝つことは絶対に不可能ですよね。そのために尾行も監視も必須。 秘匿の録音とか撮影とかそうしたことも必要になります。すべては国を守るためです。