所長就任1年目で売上が5000万円アップした理由

 それからは自分らしく、仕事を楽しむことをいちばんに考えて、数えきれないほどの困難を乗り越えてきました。
 大宮駅構内の「駅弁屋旨囲門」は「エキュート大宮」という商業施設のなかにあり、周りには寿司屋、弁当屋、惣菜屋など、強力なライバルがたくさんいます。
 お客様に「駅弁屋旨囲門」で駅弁を買っていただくには、魅力的な駅弁を取り揃えておかなくてはなりません。

 そこで私は、地方の駅弁業者さんとタッグを組み、新しい駅弁を開発することにしました。
 地方の業者さんの厨房まで出かけ、とことん味見して、「売れる駅弁」をつくったのです。
 料理に関しては素人の私がプロの駅弁業者にどんどんダメ出しするのですから、駅弁業者も最初は驚いたでしょう。
 でも、専業主婦として23年間、家族や友だちに手間暇かけた手料理を振る舞ってきた私は、自分の味覚に自信がありました。

 なによりいろいろな駅弁を一生懸命に売ってきた経験があります。
「こんな駅弁は売れない」とか、「この駅弁ならすすめやすい」という直感は、駅弁業者より絶対に鋭いはずです。
 だからこそ、遠慮なく「これはおいしくない」「このお弁当は売れない」という率直な感想を伝えました。
 駅弁業者も私の熱意を買ってくれ、私の納得がいくまで何度でもお弁当をつくり直してくれました。
 その結果、とても魅力的な駅弁ができあがったのです。

 魅力的な地方駅弁をたくさん取り揃えた結果、私が所長に就任した1年間で売店全体の売上は5000万円アップ。2年目、3年目も3000万円ずつアップしました。

東日本大震災後の窮地を救った1本370円の「はやぶさウォーター」

 2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。
 日本全体に自粛ムードが漂い、大宮営業所の売上も大きくダウンしました。
 大宮営業所が管轄している鉄道博物館の売店は、入場者数が減った影響をもろに受け、駅弁を200個仕入れても50個くらいしか売れません。1日の売上が7万円程度の日も続きました。

 そこで私は開発途中だった「はやぶさウォーター」を推し進めることを思いつきました。