2024年は公的年金の財政検証の年であり、診療報酬改定の年でもある。年金や医療制度について、持続可能な時代に即した制度への改革の議論は進むのか。特集『総予測2024』の本稿では、年金、医療制度それぞれの焦点を取り上げ検証した。(日本総合研空所調査部理事 西沢和彦)
社会保障制度の2つの課題は
財政の持続性確保と「年収の壁」の打破
わが国の社会保障制度は大きく二つの課題に直面している。
一つ目は、社会保障財政の持続可能性の確保である。139兆円(2021年度)の社会保障給付費は、年金56兆円と医療47兆円で約4分の3を占めている。主な財源は、社会保険料76兆円と公費66兆円である。
現役世代の社会保検料率は労使合計で約30%に達し、企業の雇用コスト増および家計の可処分所得押し下げ要因となっている。公費とはいっても国の一般会計の公債依存度はこの四半世紀で40%前後に高止まりしており、赤字国債依存は一向に改まっていない。一段と高齢化が進む中、給付効率化と安定的な財源確保は最優先の課題である。
二つ目は、働き方の変化や性別役割分業の是正をはじめとした時代に即した制度体系への見直しである。パート主婦(夫)の収入が一定額を超えると一挙に十数万円の社会保険料負担が発生するため、それを回避すべく就労調整が図られる。23年は、サービス業を中心に人手不足が深刻化する中、この「年収の壁」が改めてクローズアップされた。
こうした課題がある中、足元を見ると、一つ目の社会保障財政の持続可能性の確保に関しては、政府・与党は目を背けてきた。
24年は5年に1度の公的年金の財政検証が実施される。財政検証とは、人口動態や経済変数に一定の仮定を置き、今後100年間の年金財政の姿を描き出すものだ。
次ページから、国民全員が無関係でいられない、公的年金と24年に診療報酬改定の年を迎える医療制度について、それぞれの制度改革の論点と何がどう“改革”されようとしているのか、分かりやすく徹底解説する。