AIによってさまざまな業務の効率化・自動化が進む中、かつてはアナログな業務が占めていた営業現場でも、AIで効率化を図り、顧客への提案や関係構築に注力する動きが見られるようになった。AIで営業の仕事はどう変わっていくのか。そして、AIが浸透した世界に残る営業の価値とは――独自のAIで営業力強化を図る、人材サービス大手・ディップに聞いた。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
日本の営業生産性はグローバル水準を下回る
~AIは救世主となるか
日本で営業・販売に携わる人は856万人。労働人口の12%に当たる。しかし、マッキンゼーが2021年に公開した報告書「日本の営業生産性はなぜ低いのか」によれば、日本の多くの業種において、営業一人当たりの売上高は、グローバル水準を下回っているという。
朝から晩まで身を粉にして働いているのに、なぜ生産性が低いのか。主な原因は、営業担当者が、顧客対応以外に忙殺されている点にあるようだ。日本の典型的な法人営業は、勤務時間の75~90%を商談準備や社内会議、事務作業などに費やし、顧客への営業活動は10~25%に留まるという。一方、グローバルのベストプラクティスは、顧客への営業活動が50~55%と、時間の使い方が真逆だ。
コロナ禍で、一部の商談や会議が半ば強制的にオンラインに移行した。さらに生成AIの登場で、文章や資料作成をサポートしてもらおうという試みも増えている。生産性向上という点では良い傾向にある半面、ITを有効活用できるか否かが、営業個人の成績、ひいては企業競争力をも左右する場面が見られるようになった。