「闇バイト」が広がりを見せている。簡単に高収入を得られるとうたい、振り込め詐欺や薬物の運搬といった犯罪行為に加担させるこの手の求人は、SNSを中心に蔓延。Z世代の約40%が「闇バイトに勧誘された経験あり」と回答するなど、深刻な状況が続いている。そんな中、「バイトル」などの求人サイトを運営するディップは、「闇バイトチェックAI」の運用を開始した。どういった求人サイトに闇バイトの情報が多いのか。また、大手求人サイトがこうした取り組みを行うことにデメリットはないのだろうか?(ノンフィクションライター 酒井真弓)
投稿型の求人サイトなどで闇バイト業者が暗躍
人材サービス大手のディップは、「バイトル」をはじめとする自社求人サイトで、生成AIを活用した「闇バイトチェックAI」の運用を開始した。インターネットやSNSで公開されている闇バイトの事例やユーザーからの申告情報を機械学習させ、危険性の高い求人を検知。目視の場合と比較して、80%程度の審査時間削減を見込んでいるという。同社執行役員商品開発本部長の進藤圭さんに狙いを聞いた。
実は2年ほど前から、求人系アグリゲーションサイトや有名掲示板にも闇バイトの求人が紛れ込むようになった。背景には、警察によるSNS上のネットパトロールの強化などが挙げられるが、イタチごっことはまさにこのことだ。ディップをはじめ、全国求人情報協会に加盟する企業は、サイトに求人情報を掲載するまでに一定の審査体制を設けているのだが、審査がない投稿型の求人サイトなどは、大手であっても闇バイト業者が暗躍しやすい状況にある。
ディップが運営する求人サイトでは、これまで闇バイトの掲載は確認されていない。何重もの審査が功を奏しているようだ。取り引きを始める企業に営業担当者が訪問し、事業内容や社内の四隅を目視確認している。例えば、一般的に企業のオフィスにはないもの、神棚や床の間がある、逆にあるはずの固定電話がないなど、さまざまな特徴を基にチェックしていくという。加えて、与信審査や反社チェックを徹底することで、危険性のある企業との取り引きを水際で排除してきた。