政府の産業競争力会議で“解雇規制の緩和”が議論されて以来、この問題についてすごく間違った認識や偏った批判が横行しています。大新聞が“金銭解雇を容認”と報道したり、民主党の国会議員が国会審議で“金銭解雇を認めるのはけしからん”と叫んだりと、すごい事態になっています。
解雇に関する現実
しかし、産業競争力会議のHPで公開されている配布資料や議事録を読めば、金銭解雇を広く認めるべきといった提言や議論は何も行なわれていないことは明らかなはずです。
最初にこれまでの経緯を簡単に整理しておきましょう。
労働契約法第16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。そして、裁判の判例により「合理的かつ論理的な理由が存在しなければ解雇できない」という解雇権濫用の法理が確立され、①人員整理の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③対象者の人選の合理性、④手続きの妥当性、といった点から判断されることになりました。
ところが、こうしたルールのままでは、解雇権濫用法理の内容が司法判断に委ねられ、裁判となった場合には最終的に金銭解決できない(裁判で解雇無効となると現職復帰しか道がない)ので、企業の側からすれば予測可能性を欠くことになります。