スタンフォード大経営大学院教授チップ・ヒースの新刊『数字の翻訳』から、あなたの数字の伝え方が適切かどうかを調べる、簡単なテストを紹介します。(構成/今野良介)
「数字を翻訳した語句」
『数字の翻訳』は、「ただの数字」を「感情を動かす数字」に変換して伝える方法について、100以上の具体例で伝えていく本だ。
あなたの数字の伝え方が適切かどうかは、簡単なテストで調べられる。
あなたが書いた手紙や文書、パワーポイントの資料に目を通して、その中の数字をすべて丸で囲み、それらの前後に「数字を翻訳した語句」があるかどうかを調べてみよう。
たとえばこんな語句だ。
・「言い換えると……」
・「どういうことかというと……」
・「こう考えてみましょう……」
・「要するに……」
・「たとえるなら……」
こういった語句があれば、あなたの数字は議論に役立っている可能性が高い。
ない場合は、数字を「外国語」のまま放置していることになる。
数字は人間の母国語ではない。アメリカでも、日本でも、世界中どこでもそうだ。
データベースに入れるならそのままの数字でいいが、議論やプレゼンテーションで数字を使う場合は、どんなときも必ず、人間の理解できる言葉に翻訳しなくてはならない。
あなたが医師や海軍司令官、物理学者などの数字の専門家でないなら、こう考えてほしい。
『数字の翻訳』という本で紹介する簡単な翻訳テクニックは、柔道や柔術と同じで、数字に強い人と対等に渡り合うためのスキルなのだと。
たとえば、「具体的に言うとどういうこと?」「従業員1人1日あたりに直すといくら?」「この長方形が予算全体だとすると、あの支出はどれくらいにあたる?」など、議論の相手にわかりやすい翻訳を要求する方法を知っていれば、相手の言うことをしっかり理解して、互角に議論することができる。
相手はあなたを数字責めにできなくなる。そして、数字に強い人は議論できる相手が見つかったと喜び、クールに見えるあなたが数字に強いと知って感心するだろう。
この能力が役に立たない、なんて言う人は1人もいないはずだ。
新製品の消費者テストの予算を要求する部長から、宇宙の2地点間の距離を伝えようとする科学者、キャンペーンの効果を発表する広報部員、トレーニングを毎日数分増やすメリットを説くコーチまで、どんな人にも役立つはずだ。
最近では、直感的にわかりにくい数字が使われることがますます増えている。数字は、研究開発からカスタマーサービスまでビジネスのあらゆる分野で使われ、科学からスポーツ、政府まで人間のほとんどの営みの中心にある。
そんな世界では、数字で人を動かす能力が成否を分けるのだ。
※本記事は書籍『数字の翻訳』の一部を元に編集しています。