書影『全身ジャーナリスト』『全身ジャーナリスト』(集英社新書)
田原総一朗 著

 それをいま勉強中なのだ。いずれ勉強会の成果も報告したいと思う。現時点ではっきり言えることの1つは、日米安保における主体性回復としていま日本が全力を挙げて取り組むべきは、対中国外交の活性化だということだ。

 米国にはない日本独自の対中人脈、情報網を作り上げ、それを梃(てこ)に米中間の緊張緩和を進めること。万が一にも台湾への武力侵攻という事態にならないよう、中国を外交的に抑止し、返す刀で米国にも自制を求める。

 いまさらそんなことをしてもと言う人がいるかもしれないが、いまさらだが、しなくてはならないこともある。ここには、日本の命運がかかっている。主体性を考えることは、僕なりの「非戦の流儀」なのだ。

 日中間は地政学的にも一衣帯水である。近代の日本の安全保障は、米国との関係によって規定されてきたと言ってきたが、ここに新たに中国を加えることだ。方程式は複雑になるが、逆に言えば、外交カードは増えることになる。自民党内で実力者であると同時に、習近平政権が最も信頼する親中派政治家である二階俊博を軸にした議員外交を1つの突破口にすべきだろう。

 核の傘については、基本的には現状維持だが、核の傘が果たして真に有効なものなのかどうかを常に点検する必要がある。トッドの言う疑念が根も葉もないものなのかどうか、常に米国と対話を続けていかなければならない。同時に、いまは忘れられてしまっている日米地位協定の改定にも取り組まなければならない。

 日米安保における主体性の回復。これは実は、日本で生きるすべての人にとって焦眉の課題なのである。非戦のためのライフワークとして成果を上げられるか否か。僕のジャーナリスト人生の正念場を迎えている。