パレスチナ自治区ガザの開業医アフマド・アルジャマル(73)は地域社会にしっかり根を下ろした人物だった。  午前はガザ中部ヌセイラットの難民キャンプにある公立診療所で、午後は自身の小さなクリニックで診察を行っていた。住民が割礼を行う際にも彼が頼りだった。また地元のモスク(イスラム教寺院)のイマーム(導師)を務め、コーランを朗読する美しい声で知られていた。  だがここ数カ月間、毎日仕事を終えて帰宅するアパートには、彼の息子とその妻、子どもたちが一緒に住んでいただけではない。イスラム組織ハマスのために一家が監禁するイスラエル人の人質3人がいたのだ。