「荷上場エリアで、代々、村政を取り仕切っていた地元の旧家『菊池家』が江戸時代に『坂野泉』という酒を造っていたという文書が残っています。当時のにぎわいをしのび、約200年前の地酒をどぶろくで復活させたいと考え、歴史のリサーチからスタートしました」(伊藤氏)
図書館で古い文献を当たり、専門家にも江戸時代の酒の仕込み配合をヒアリング。精米歩合など当時の技術的歴史背景を考慮した味わいの再現に取り組んでいく。原材料にあきたこまちと米麹、地元の白神こだま酵母を使い、どぶろくにどぶろくを仕込むという「再仕込みどぶろく」製法を考案。
21年、菊池家に残っていた坂野泉の看板をラベルにデザインした「再仕込みどぶろく 坂野泉」が誕生。「あきた食のチャンピオンシップ2023」菓子・飲料の部で、見事、金賞(県知事賞)を受賞した。
火入れ・瓶詰めにより
土産物として支持を得る
どぶろくは、生で提供することが多いが、きみまちの詩同様、火入れ・瓶詰めにより、土産物としても重宝される。同店の店頭やネット、道の駅、スーパー、小売店などで販売し、「お中元やお歳暮にも活用いただいています」と伊藤氏。
冬季の仕込みシーズンになると店舗裏の作業場にこもりっきりになるが、新しい事業が少しずつ認知され、軌道に乗ってきた手応えを感じているという。
今後は地元のフルーツ、リンゴやラズベリーなどを配合した、食前酒や食後のデザート感覚で楽しんでもらえる新たなどぶろくにも挑戦したいと意気込む。
坂野泉やきみまちの詩を通じて、地元の歴史あるストーリーを多くの人に知ってもらい、訪問してもらえるきっかけになればと願う伊藤氏。地元への思いが生んだ歴史あるどぶろくを契機に、まちおこしにもつなげていく構えだ。
(「しんきん経営情報」2024年6月号掲載、協力/羽後信用金庫)