辛いだけでなくうま味と風味が楽しめる、安心・安全な激辛国産唐辛子を展開

国内自給率がわずか1~3%で、低価格の中国産が主流の唐辛子。激辛ブームが定期的に訪れる中、辛いだけでなく、うま味と風味にこだわった唐辛子の栽培・加工・販売を手がけるのが、広島県庄原市の吉岡香辛料研究所だ。(取材・文/大沢玲子)

辛いだけでなくうま味と風味が楽しめる、安心・安全な激辛国産唐辛子を展開代表 吉岡 紘氏

 意外にも「もともとは辛いものが大の苦手」と明かす代表の吉岡紘氏。友人に誘われ、広島名物の辛いつけ麺を完食したのを機に徐々に激辛にはまっていく。

 広島市内から出身地の庄原市にUターンし、会社勤務の傍ら実家の荒れた農地を整備。ホームセンターで見つけたハバネロの苗を植えたところ大豊作となり、友人に食べさせたことが起業の契機となった。

「あまりの辛さに『うわー!』と大騒ぎし、反応を見てゲラゲラ笑い合う。自分が作ったものが受け入れられ、リアクションが返ってくることにこれまでの仕事にはない快感を得ました」(吉岡氏)。

 唐辛子栽培の楽しさに目覚め、栽培品種を広げ、加工した商品を地元の道の駅でテスト販売したところ想定以上の売り上げを達成。2018年、開業に至る。

無農薬栽培・低温乾燥法で
安価な中国産と差別化

 ただし、事業として展開するには安い中国産と一線を画した差別化が必要となる。農業経験ゼロからスタートした吉岡氏。当時は唐辛子栽培の専門書などもなく、独学で栽培法を確立していく。

 一つ目のポイントは連作障害への対応。唐辛子はナス科の品種で、続けて同じ土壌で栽培すると生育不良などの障害を起こす。殺菌剤を使うなど試行錯誤をした結果、「自然のサイクルに合わせて栽培するのがベストだと気付きました」(吉岡氏)。

 秋の収穫期後、山で集めた落ち葉、米ぬか、独自培養の菌液などを合わせたオーガニックな土作りを実践し、安心・安全な無農薬栽培を実現している。