ハーバードハーバードビジネススクールの学生たちと(前列左から1人目が平井光城氏、右から1人目が金川和実氏)=2024年4月25日、ボストン 写真提供:金川和実

かつて海外の経営大学院に自費で留学した日本人学生といえば、在学中から熱心に就職活動をし、卒業後は経営コンサルティング会社や金融機関など、大手企業に転職するというのが定石だった。ところが、2024年5月にハーバードビジネススクールを卒業した日本人学生の進路を取材してみると、私費留学生の大半は「起業準備中」または「就職先を検討中」。なぜあえて大手企業に就職しない道を選択しているのだろうか。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

ハーバード卒業後のキャリアは?
起業を後押しした手厚い奨学金

 2024年5月、ハーバードビジネススクール(以下、ハーバード)を卒業した平井光城(ひらい・みつしろ)さん(33)は、7月に日本に帰国し、自らの会社を創業する予定だ。新会社では「インパクト高度人材」と企業・団体を結びつけるマッチングサービスを提供するという。

「インパクト高度人材」とは、社会的インパクト投資・評価の専門家や環境・社会事業を牽引(けんいん)するリーダー人材のこと。こうした社会課題の解決に関心を持つ高度人材に特化したマッチングサービスは、欧米では広まりつつあるものの、日本ではまだまだ目新しいビジネスだ。

 平井さんは2016年にコロンビア大学国際公共政策大学院で修士号を取得後、新卒でボストンコンサルティンググループに入社。2018年からはビル&メリンダ・ゲイツ財団でキャリアを積んだ後、2022年8月、ハーバードに入学した。

 卒業後、大手企業に就職せずに自分で起業しようと思ったのは、ハーバード留学中に、ビジネスを通じて社会・環境的な課題を解決することの価値を実感したからだ。

 近年、ハーバードではサステナブル経営について学ぶ授業が急増。「企業の社会的パーパス」が必修授業に加わり、選択授業でも社会起業やインパクト投資に関する科目が増えている。平井さんはこうした授業を履修する中で、起業への思いを強くしていったという。