どんな人でも確実に頭がよくなり、心も鍛えられる。しかも、誰でもどこでもできて、お金もほとんどかからない。そんなシンプルな方法を紹介し、ロングセラーになっているのが、『ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング』(赤羽雄二著)だ。著者は、メーカーを経てマッキンゼーで活躍。大企業の経営改革や経営人材育成などに取り組んでいる人物。その驚きのトレーニング方法とは?(文/上阪徹、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

ゼロ秒思考Photo: Adobe Stock

人間は本来みな頭がいいはずなのに

「考えをすぐに言語化できるようになった」「自己肯定感が上がった」「心の中のモヤモヤがなくなった」「すぐに行動できるようになった」……。

 そんな声が続々と寄せられているのが赤羽雄二氏による「ゼロ秒思考」という思考法だ。

 このメソッドは「メモ書き」によって、思考と感情の言語化をトレーニングするというもので、30数年にわたって改良と実践がなされ、すでに数十万人の人たちが効果を実感しているという。

 そして、「ゼロ秒」とは、そのトレーニングの結果として、「瞬時に現状を認識をし、瞬時に課題を整理し、瞬時に解決策を考え、瞬時にどう動くべきか意思決定できることだ」と著者は説く。それが実現できるようになるというのだ。

「メモ書き」ならすでにやっている、という人も少なくないかもしれない。しかし、このメソッドは、具体的な手法に落とし込まれていて、すぐにマネできるのが特徴だ。

私がお勧めしたいのは、(中略)A4用紙を横置きにし、1件1ページで、左上にタイトルを書き、1ページに4~6行のみ、各行20~30字、毎日10ページ、1ページを1分以内に書くやり方だ。(P.65)
メモ1(『ゼロ秒思考』P.60より)メモ1(P.60)

 メモというと、予定や用件をメモすることが思い浮かぶが、そうではない。考えたこと、思いついたこと、嫌だったこと、こうしようと思うことなど、なんでもいい。

 思いついたときに、1ページに1分以内に書いていく。それを繰り返していくことで、大きな効能が得られるという。

メモを書くと、自信が出てポジティブになる

 効能の一つ目は「メモを書くと、頭が整理される」ことだ。

 あれやこれやと頭で考えているだけでは、実はなかなか思考は進まない。しかも、言葉にできずにぼんやりした状態のままで考えても、時間ばかりが過ぎていくだけだ。

メモに書くことで、もやもやした思い、懸案事項、考え方も整理される。頭がすっきりする。もやっとした思いを言葉に直し、手書きし、目で確認することで、メモが外部メモリになる。そうすると、驚くほど頭の働きがよくなる。そう、人間の頭はそれほどキャパがあるわけではないので、何かに気を取られるとうまく動かないのだ。(P.65)

 なんとなくできていた「暗黙知」は、はっきりと形になって「形式知」にできる。そうすれば、部下やチームメンバーに具体的に指示ができる。ノウハウの伝達が、容易にできるようになる。

 急に思いついたテーマでも、すでにメモしたものと似たようなテーマでも、何度でもメモにしていけばいい。そうすることで、より思考は深まっていく。頭が整理されて、やるべきことが見えてくる。

 そして、効能の二つ目に挙げられているのが、「メモを書くと、自信が出てポジティブになる」ことだ。

メモを書くと、何よりも頭がすっきりする。頭に浮かぶこと、揺らいでいることを言葉にしていくので、もやもやがほとんどなくなる。そうすると、今心配しても仕方がない心配事、なんとなく気になっている懸案事項などが整理され、本当に大事なことだけが見えてくる。たとえば(中略)メモ2のような感じだ。(P.67)
メモ2(『ゼロ秒思考』P.68より)メモ2(P.68)

 何かをやらなければいけないとき、いろいろ気になることが頭に浮かんでくる。しかし、メモを書いていくことで、何が本当に重要なのかが見えてくるのだ。一度ですっきりしないなら、何度書いてもいい。1ページ1分なのだ。

 また、「どうにも気分がすぐれないな」というときには、それをメモにしてしまう。感じたまま、浮かんだまま、何も吟味せずに書く。そうすると、思わぬことが気になっていたことに気づけたりするという。

メモ書きによって、自分の置かれた状況、目の前の課題が素早く可視化され、優先順位も自ずと明確になり、課題が速やかに解決され、好循環が始まり、人間が生来持つ自信とポジティブさが自然にでてくるのだ。(P.70)

腹が立つ状況そのものが急速になくなっていく

 効能の三つ目に挙げられているのが、「メモを書くと、腹が立たなくなる」。腹が立ったとき、気分が悪い時は、それを全部メモに書き出してしまうのだ。

 そうすると、楽になるという。相手の名前もストレートに書いてしまう。誰かが読むわけではないからだ。それを何枚、書いてもいい。1ページ1分なのだから。

今日の会社の出来事などで気分が優れない方は、(中略)10~15ページ書いてみてほしい。相手がどうしてそんなひどいことをしたのか、相手がどんなに悪い人間か、ということを思い切って書く。遠慮なく書く。誰に見せるわけでもない。人の名前も省略せずに書く。言ってみれば、悪口を書き殴る(P.71)

 これで不思議なほど、気分が落ち着くという。すっきりすると同時に、最初は見えなかった自分の落ち度も見えてくる。

 「絶対に許せない、本当にひどい」と思っていたことが、客観視できるようになる。起きた原因を見つめ、それに対して何をすべきなのか、何をすべきでないのかが把握できる。

 加えて、むやみに腹を立てることも減るという。気分を害されることもなくなっていく。感情的にならず冷静に対処できるようになる。引け目や劣等感も減っていく。腹が立つ状況そのものが急速になくなっていく。メモがそれを可能にしてくれるのだ。

 そして、効能の四つ目が「メモを書くと、急成長できる」だ。

メモを書くと、頭の整理ができるようになる。頭の整理ができるというのは、今何が大切か、大切でないか、今何をすべきか、しなくてもよいのか、常に明確にわかっているということだ。いろいろな問題が同時に起きても、慌てず騒がず、必要な情報を収集し、重要・深刻なものから順次解決していくことができる。(P.74)

 まさにこれこそ、多くのビジネスパーソンが描いている理想の状態ではないだろうか。

 こうなれば、どんどん成果が出る。やればやるだけ前に進む。結果として自信がつき、ポジティブになり、何があっても容易に感情を乱されない、と著者は記す。

 自分に自信を持ち、かつ謙虚な自然体でいられるようになる、と。

誰でも頭がよくなり、心が鍛えられるメソッド

 いかがだろうか。「メモ書き」には、これほどいろんな効果があるのだ。

 しかも、赤羽氏のメソッドは具体的かつ網羅的で誰でも取り組みやすい。

 メモの深掘り法から書いたメモの活用方法、企画書などへの展開方法、保存法まで、至れり尽くせりでどうすればいいのかを教えてくれる。

 ビジネスパーソンをはじめ、多くの人の悩みの解決を助けてくれることだろう。

(本記事は『ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング』より一部を引用して解説しています)

上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『彼らが成功する前に大切にしていたこと』(ダイヤモンド社)、『ブランディングという力 パナソニックななぜ認知度をV字回復できたのか』(プレジデント社)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。