【ビル・ゲイツ独占取材】私と孫正義が見据える「AIの未来」について、初めて明かそうPhoto:JIJI

想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の最終回。対談相手は、IT界の巨星ビル・ゲイツ氏。孫正義氏の後継者問題、AIの進化と人類の未来など、多岐にわたる洞察を披露してくれた。(構成/ダイヤモンド・ライフ編集部 松本幸太朗)

ビル・ゲイツ「ロボットが大きな市場になる」

井上 以前、マサはあなたたちが互いを理解し、志を同じくしていると言っていました。マサとの関係をどのように特徴づけますか?

ゲイツ 彼と話すのがとても好きです。彼が成し遂げたことやそれを実現するために示した勇気に敬意を表します。

 最近でも、ロボットが大きな市場になる時期について話しています。彼はボストンダイナミクスというロボティクス企業を長い間所有してきました。いつか、ロボットは非常に大きな産業になるでしょう。

 私たちは初期の市場がどうなるか、誰がそこで最も良い仕事をしているかについてよく話します。私たちには多くの共通点がありますが、異なる点もあります。私はより実践的なエンジニアです。私の初期のキャリアはソフトウェアを書くことでした。マサは非常に多文化的で、中国での業績を含めて非常にグローバルです。

 彼はチャーミングな人であり、テクノロジーの分野で自身が果たしてきた役割に対して謙虚でもあります。AIに関する予測を含め、彼の考えはまだ非常にエネルギッシュです。

 また、彼は私よりもはるかに優れたゴルファーです。彼は東京の自宅に素晴らしいゴルフマシンを持っています。

 マサと過ごす時間は常に楽しいです。私たちは気候変動対策に関する仕事を含め、多くのことを一緒にしてきました。AIの分野でも一緒に取り組めることを確信しています。

ビル・ゲイツ、AIの進歩に
「興奮と同時に恐怖を覚える」

井上 AIやAGIが社会にどのように利益をもたらすと見ていますか?考慮すべき潜在的なネガティブな影響は何でしょうか?

ゲイツ AIは人類がこれまでに発明した最も強力な技術であり、それが利益をもたらしたり、損害を与えたりする可能性に対して、興奮するのと同時に少し恐怖を覚えます。

 人類は生物テロや核兵器といった困難な技術に対処してきましたが、AIはいくつかの点で異なります。過去の教訓は示唆的ですが、私たちが考えるべきことは多く残されています。

 同時に、AIは医療や教育をより良いものにしてくれる点で有益です。AIは高齢者特有の課題に対処するときに役立つでしょう。それが善意で使用されたときは、私たちをワクワクさせてくれます。それが十分に有益なものになると、今日不足している多くのものを提供する形で私たちの社会を作り変えるでしょう。

 そして、時間に猶予があるときに、私たちはそれをどう使うかを自問しなければなりません。私たちの社会は不完全です。AIは社会が抱える問題を解決するのに役立ちます。特に気候変動や高齢化する労働力に対して確かに役立つでしょう。

 社会の分断を解消したり、またはAI自体の扱い方を考えたりすることは、可能な限り私たちの世代が貢献すべき課題であり、次世代が取り組まなければいけない主要な課題です。

 こうした動きの一役を担えること、そして被害を最小限に抑える方法を考えることで課題を解決できるのではないかとワクワクしています。マサに会うときは、AIによる課題解決が私たちの重要な議題になると確信しています。

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