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「IQの高い人」や「試験の成績がいい人」が優秀とされていた時代は終わった?なぜなら、IQで測られているのは「頭のサイクルの速さ」であり、本当に大事な「良いアイデアを生み出す能力」とは関係がないから――。それならば、今後は何をもってして人間の能力を測ればいいのか。本稿は暦本純一、落合陽一『2035年の人間の条件』(マガジンハウス)の一部を抜粋・編集したものです。

AIの「回転の速さ」は
作業効率を高める

――これまでの社会では、IQテストや学力試験の成績などの高い人間が「優秀」とされる傾向が強かったわけですが、仮に将来IQテストが「オワコン」になったとき、どんな尺度で人間の価値を測ることになるのでしょう。

暦本 僕は落合君ほど過激ではないので(笑)、必ずしもIQテストがオワコンになるわけではないとも思っているんですよ。AIのサポートを受けるにしても、IQの高い人のほうが効率よく仕事を処理できることに変わりはないでしょう。単純な話、チャットGPTとやりとりするサイクルはIQの高い人のほうが速くなりますから。そもそも、AIに何を質問すべきかを考える上でもIQ的な能力は必要です。

落合 いまでも、グーグルの検索ウインドウに入力するキーワードの選択によって、得られる情報の精度には差が出ますからね。

暦本 IQで測られているのは基本的に頭のサイクルの速さであって、良い発想を生めるかどうかとは直接は関係ない。回転の速さは作業効率を高めるだけです。

 そのサイクルにAIが含まれると、全体の回転数が上がるでしょうね。いまのところLLM*1はまだレスポンスが遅いけれど、今後それが速くなると、聞いた瞬間に答えが返ってきたり、聞き終わる前に食い気味に答えたりする。

 そうやって全体のサイクルが速くなると、30分なら30分のあいだに投げられる質問の数がこれまでよりも激増するわけですよ。無駄かもしれない質問をバンバン投げられるので、試行錯誤の回数が増える。レスポンスが遅いと、一発で最適解を引き出したいから、それができない。レスポンスが速くなるほど、答えに到達するまでに無駄がいっぱいできます。そういう無駄な球をより多く投げられるのは、IQの高い人かもしれませんね。