ニュースな本写真はイメージです Photo:PIXTA

近年、テクノロジーの発達により人類のIQが低下しているという説がある。狩猟採集生活をしている人のほうが、機械に依存して自分で物事を考えなくなっている人より賢いというのだ。しかし、確かにAIが人類を助けてくれるなら、特に知能が低くても問題ないとも言える。はたして研究者たちの見解は――。本稿は暦本純一、落合陽一『2035年の人間の条件』(マガジンハウス)の一部を抜粋・編集したものです。

人類の知能が
低下している可能性

 暦本純一がリサーチディレクターを務める「ソニーコンピュータサイエンス研究所─京都」内に設けられた茶室「寂隠」(*1)にて、対談は始まった。

落合 おお!ここが噂の「寂隠」ですか。僕も裏千家茶道をやっているので、初めてこのお茶室にジャックイン(*2)できて感激です。

暦本 ようこそ。ここを僕たちと共同で開設した茶美会文化研究所も、裏千家ですよ。お茶室としてはきわめてオーセンティックな数寄屋建築なんだけれど、天井にはKinect(キネクト)(*3)や3次元センサーが入っていて、そこの裸眼立体式ディスプレイの前に座ると、向こうからお茶碗を手元に出してもらったように見えるんですよ。

落合 僕も大阪・関西万博の仕事で、裏千家の千玄室大宗匠をデジタルヒューマンにさせていただきました。

暦本 僕はデジタルが大好きで、本もほとんど電子書籍でしか読まないけど、一方で茶の湯のような文化は大事だと思っているんです。今回の対談はおもにAI(人工知能)について語り合うわけですが、こういう伝統文化や芸術は、たぶんAIを飲み込むようにして発展するでしょう。落合君とは、そんなことまで話せたらいいですね。

落合 よろしくお願いします。僕は今日、この話から始めたいと思っていたんですけど、暦本先生はちょっと前(2023年11月)に、X(旧ツイッター)で『知能低下の人類史』(*4)や『オートメーション・バカ』(*5)などの本を紹介して、人類の知能が低下している可能性に言及されていましたよね。

テクノロジーの発達で
知的能力が減退した人類

暦本 ああ、はいはい。20世紀までは、いわゆる「フリン効果」(*6)によって人類のIQ(知能指数)は上昇し続けるという説が主流だったけれど、近年の研究では、むしろ人類のIQが下がっていることを示すエビデンスも出てきているんですよ。

 たとえば『知能低下の人類史』によれば、知能低下のおもな原因は「高知能の人が生む子どもの数が少ない」こと。そんな話を紹介したので、あのポストはやや炎上気味でしたけどね(笑)。