次に、保護区の中に生えている13種の樹木や薬草から成分を抽出し、抗炎症作用や抗菌作用の有無を調べた。これらの植物は、チンパンジーが普段は食べないが、病気やケガをしたときには食べることが観察されたものと、含まれている薬効成分を目的にチンパンジーが食べている可能性があることが過去の研究で示唆されていたものだった。

88%に抗菌作用、33%に抗炎症作用

 その結果、検討した13種の植物成分の88%に抗菌作用、33%に抗炎症作用のあることが明らかになった。中でもキョウチクトウ科のAlstonia booneiの枯れ枝は抗菌作用が最も強かった上に、抗炎症作用も併せ持つことが確認された。

 このことから、チンパンジーはこの植物を創傷の治療に用いている可能性が考えられた。また、アフリカマホガニー(Khaya anthotheca)の樹皮と樹脂、およびシダ植物の一種であるChristella parasiticaの葉も抗炎症作用を持つ可能性のあることが分かった。

 研究グループは、手傷を負った1頭の雄のチンパンジーがChristella parasiticaの葉を食べていたのを観察しており、痛みや腫れを軽減する効果があったのではないかと見ている。また、寄生虫に感染している1頭がクロウメモドキ科のScutia myrtinaの樹皮を食べている姿も目撃したという。薬理学的調査では、Scutia myrtinaには抗炎症作用と抗菌作用のあることが確認された。

 研究グループは、「これらの結果は、チンパンジーが治癒効果を目的に特定の植物を探し出して摂取していることを裏付ける、説得力のあるエビデンスとなるものだ」と述べている。

 また、「この論文でわれわれは、同じ霊長類に属する、いわば人間の従兄弟ともいえるチンパンジーを観察して学ぶことが、新薬の発見につながる可能性のあることを示すとともに、未知の薬剤が見つかる可能性を秘めた森林を保護することの重要性も明示した」と述べている。

 なお、霊長類がこのように高度に進化した医療行為を行っているのが発見されたのは、今回が初めてではない。最近発表された別の報告では、ボルネオ島のオランウータンが顔の傷に薬草を擦り込み、治癒を早めている姿が観察されている。(HealthDay News 2024年6月21日)

https://www.healthday.com/health-news/general-health/wild-chimpanzees-may-practice-natural-medicine

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