厚生労働省が発表した「遺族厚生年金」の改正案が、SNS上で大炎上している。ただ、この改正案について誤解している人も少なくないようだ。年金制度は複雑で難しいが、正しい知識を持っておきたい。今回は、この遺族厚生年金の改正案について、ポイントを分かりやすくお伝えする。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)
遺族年金改正案に批判殺到
身に付けておきたい「正しい知識」
7月30日、社会保障審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の年金部会で遺族年金の改正案の検討が行われた。
会社員・公務員などが亡くなった際に配偶者らが受け取れる「遺族厚生年金」は、現行では受給要件の男女格差がある。共働きが一般的になったことから男女格差をなくすことと、子どもがいない人の受給期間を一生涯から5年間の有期にすることなどが検討された。
審議会の1週間ほど前に改正案の資料が公表されたため、SNS上では「改悪」と受け止めた反応が多数散見していた。
今回のコラムでは、他に書きたいテーマがあったのだが、審議会の開催後はテレビの情報番組がネガティブ報道をすると思ったので、予定を変えて「遺族厚生年金の改正案」について取り上げることにする。
日本経済新聞社の報道が早かった。審議会開始30分後には「遺族年金の受給期間、一律5年に 男女差是正へ厚労省案」のタイトルで速報メールが届く。
遺族年金の全てが5年間になると誤解を招きそうな見出しになっている。日経さん、この見出しはいただけないですよ。本文には「子どもがいない場合の受給期間を男女とも5年に統一する方針を示した」とあるが、本文を読まずに見出しを見ただけで「遺族年金は5年で打ち切り」と受け止めた人は少なくないだろう。速報ニュースは見出しとともにXで拡散されていた。
いつも言っていることだが、年金制度は難しい。でも、社会保障は自分を守ってくれるものだから、最低限の知識を「正しく」持っておくことが重要だ。今回は、改正案の誤解ポイントを解説する。