ビールで乾杯する様子写真はイメージです Photo:PIXTA

バンドマンが集まるライブハウスには、彼らの夢を否定する者はいない。ともに夢の実現に向けて刺激し合える、「ライブハウス共同体」とも言える関係性ができあがっている。筆者がインタビュー調査したバンドマンたちによれば、こうしたライブハウスで重要なのは、イベント終了後に行われる打ち上げだという。本稿は、野村 駿『夢と生きる バンドマンの社会学』(岩波書店)の一部を抜粋・編集したものです。

ライブ後の打ち上げが
バンドマンを結束させる

「ライブハウス共同体」はどのように生まれるのか。

 一つには、ライブイベントの対バン形式がある。複数のバンドが出演することで、自ずとバンドマン同士の関係性ができあがる。しかし、それ以上に重要だと、特にバンドマンたちから語られたのは、イベント終了後に行われる打ち上げである。特別な理由がない限り、打ち上げは行われる。そして、出演したバンドを中心に、ライブハウススタッフなども加わって、深夜遅くまで開かれることも多い。かれらは、ライブイベントの緊張から解放されて打ち上げに参加し、バンドマン同士あるいはライブハウススタッフとの関係を築くのである。

トウマ:打ち上げでバンドマンは仲良くなります。それはもう絶対に。打ち上げって絶対にあって。ミュージシャンって結構人見知りだったりするんですよ。ほぼ全員が。で、まあ、「どんな人と一緒なんやろう」、いったら全員敵なんでね。ライブ出てる人なんかは。お客さんの取り合いやから。それで終わって、ちゃんとお互いに見合って、「めちゃかっこいい、このバンドは」「このバンドはそんなだったな」とか感じるんですよ。で、その後に打ち上げって感じなんですよね。昔から教えられる、ちっちゃい子が寝る前に歯磨くのと一緒で、なんか絶対やらないといけない行事。

――打ち上げには必ず出るように。

トウマ:絶対出ますね。絶対出て、そこでみんな、肩の荷が下りた状態でお酒を飲むと、もう友達なんすよね。それがすごい面白くて。

――どんな話するんですか?

トウマ:どうなんやろな。人によるんですけど、たとえばほんまに音楽の話ばっかりしとる子もおるし、ずっとダメ出ししてくれるおっさんもおるし、まったく関係ない話も、下ネタとか(笑)。ただ盛り上がってる、酒の飲み比べ、これが大体多いですね。

 そして、ここでできた関係性がさらなる関係性へとつながっていく。つまり、打ち上げでの出会いをきっかけにして、互いをイベントに呼び合うようになり、そこで新たな関係性が生まれて、という循環である。こうしてライブハウスを中心に絶えず関係性がつくられていき、より多くのバンドマンとライブハウススタッフからなる関係性の束=共同体ができあがる。