独身を通してきた人をはじめ、配偶者と死別・離別した人など、世の中にはさまざまな事情で「おひとりさま」として暮らす人がいます。しかし一口におひとりさまと言っても、年齢を重ねた後も幸せに生きていける人と、不安やストレスにさいなまれながら生きていく人に分かれるのが現実です。両者を分ける「壁」の正体は何なのでしょうか。生前整理・遺品整理のプロ、山村秀炯(やまむら・しゅうけい)氏の書籍『老後ひとり暮らしの壁』から抜粋して、その答えをお届けします。今回のテーマは「結婚」について。
ひとり暮らしのコスパ
今回は、ひとり暮らしの人が陥りやすい金銭感覚の罠について触れていきます。
「結婚はコスパ(コストパフォーマンス)が悪い」
「ひとりはお金が自由に使えて最高」
そんな意見を目にすることがあります。もちろん、結婚するのも独身を貫くのも、お金だけが理由ではないでしょう。ただ生き方の選択には経済的な視点も欠かせませんから、こうした切り口で良し悪しを語る人がいても不思議ではありません。
さて、本当にひとり暮らしは経済的自由を手にしやすいのでしょうか? 結婚はコスパが悪いのでしょうか?
結婚のコスト面だけを見れば、独身よりも高くなることは容易に想像できます。
婚約指輪に結婚指輪、結納式、結婚式代。親の援助などがあるとしても、百万単位のお金がかかります。ゼクシィ結婚トレンド調査2022によれば、結婚資金の平均額は371万3000円だそうです。
それから子どもができたら、ひとりを大学まで通わせた場合に約3000万円かかるといわれています(参考「フコク生命の学資保険みらいのつばさ」)。
これらのお金は結婚することで単純に上乗せされるものです。独身でいればその分を自由に使えると思えば、たしかに結婚はお金がかかります。
ただしパフォーマンスの面に目を移せば、結婚と独身生活でそれぞれ得られるものの価値基準はまったく違いますから、一概にどちらが優れているとはいえないでしょう。