★NHK「100分de名著」に著者・佐宗邦威さん出演で話題!★
同じようなアイデアを出しているのに、すぐに周りの共感・賛同を得られる人がいる一方、なんとなくみんなの反応がいまひとつで、スルーされがちな人がいる。この違いはどこにあるのだろうか──? 『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』の著者・佐宗邦威さんに聞いてみた。
佐宗さんといえば、先日放送されたNHK「100分de名著」に神話学者ジョゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』の解説者として出演されたばかり。佐宗さんによれば、「共感されるアイデアのつくり方」と同書の核となる理論「英雄の旅」とのあいだには、じつは意外なつながりがあるという──。

【テレビ出演で話題】「共感されない意見」を出してしまう人が、見落としがちなポイントとは?Photo: Adobe Stock

「妄想」からスタートした発想こそ、
「自己満足」で終わってはいけない

──佐宗さんの『直感と論理をつなぐ思考法』のメインテーマは、「人々が欲しがっているもの(客観)」ではなく、「自分自身のこだわり(主観)」を出発点にした発想法です。ですが、それだけだとなかなかうまくいかないケースもあるのではないでしょうか?

 たしかに同書では、個人の「妄想」からスタートして、それを具体化していくための手法を語っています。

 他方で忘れてはならないのは、「そもそも何のために考える/発想するのか?」ということですね。僕はこの問いに「人を動かすため」と答えることにしています。

──どんなに優れた発想であっても、それを実現するのは一人だけでは難しいですからね。

 スティーブ・ジョブズのビジョンがいくらすばらしかったとしても、それに共感するパートナーや従業員、投資家や消費者がいなければ、アップル製品がここまで世界を変えることはなかったでしょう。

 ジョブズはビジョン創出の天才であったと同時に、そのビジョンの渦に人を巻き込んでいくことにおいても、類まれな才能を持っていたのだと思います。

 ですから、妄想を具体的に「表現」していくときには、自己満足で終わってはいけなくて、「他人に影響を与えること」を最終目標にするべきです。

 その「妄想」がいくら魅力的なアイデアだったとしても、それを聞いた人が「へえ~、それは面白いね」だけで終わるのだとしたら、そこにはまだ決定的な何かが欠けているということなのでしょう。

「具体性」こそが人間の心理を揺さぶる

──そのときの手法として、佐宗さんは以前から「プロトタイプ(試作品)」の重要性を訴えていらっしゃいますね。

 そうですね。「人を動かす」ことを考えたとき、プロトタイプは最も強力な手段の1つだと思います。しかも、プロトタイプを見せられた側が、思わず身を乗り出して「私にも手伝わせてくれませんか?」と言い出すレベルを目指したほうがいい。

 僕の経営するBIOTOPEでは、クライアント企業の新規事業創出などをお手伝いすることが多いのですが、そういうときにも「プロトタイプに共感してもらうこと」を重視しています。

 100個とか200個といった事業アイデアがあるとき、「市場性がある」「技術がユニーク」「ポジションを取れる」といった特徴だけだと、経営陣はなかなか「これはモノになる!」と判断ができません。最後のひと押しが欠かせないんです。

──最後のひと押しには、何が必要なんでしょうか?

 2つのポイントがあって、1つは担当者が「本気」かどうか。そしてもう1つが、アイデアが「具体的」かどうかです。

 たとえプロトタイプが荒削りであっても、初期ユーザーや開発パートナーの「具体的な顔・名前」が見えているアイデアは、経営陣からもゴーサインが出ることが多いですね。

──まさにプロトタイプが経営の意思決定に対して「影響力」を発揮しているわけですね。

 何を隠そう、『直感と論理をつなぐ思考法』という本を僕が書くことにしたのも、まさにプロトタイプに影響された結果なんです。

 本書を担当してくれた編集者さんは、僕に初めて会いに来たときに、文字だけの企画書の代わりに、「本の装丁」のプロトタイプを3つ持参してきてくれました

 決して本格的にデザインされていたわけではなく、パワーポイントで作成した簡易なものだったんですが、オビコピーも添えて原寸大で印刷されており、非常にワクワクさせられたのを覚えています。僕自身もまんまと「プロトタイプの魔力」に動かされてしまったわけですね。

「スターウォーズ」の下敷きにもなった
人類共通の「物語構造」とは──?

──相手に「共感」を生み出したり、「影響」を与えたりするプロトタイプをつくるには、どうしたらいいんでしょうか? コツのようなものがあれば、ぜひ知りたいです。

 そこで大事になるのが、「ストーリー(物語)」です。単に相手にアイデアの内容を「理解」させるだけでなく、「相手を動かすこと」を目指すのであれば、ストーリーは強力な武器になります。

──ストーリーメイキングの手法の1つとして『直感と論理をつなぐ思考法』では、神話学者ジョゼフ・キャンベルの「英雄の旅」というフレームワークを紹介されていますよね。しかも今回、このキャンベルの主著『千の顔をもつ英雄』について、テレビ番組「100分de名著」(NHK)で解説をされたとか。

 そうなんです。キャンベルは世界中の神話に見られる共通のパターンを分析し、「英雄の旅」というフレームワークをつくりました。

 この枠組みでは、「主人公」「試練」「メンター」という構成要素をめぐって、いくつかステップのストーリーが展開されていきます。「英雄の旅」フレームワークは、ハリウッド映画などにも応用されており、ジョージ・ルーカス監督が「スターウォーズ」シリーズを製作する際に活用したことで有名になりました。

【テレビ出演で話題】「共感されない意見」を出してしまう人が、見落としがちなポイントとは?「英雄の旅」に見られる物語構造(佐宗邦威『直感と論理をつなぐ思考法』245ページより)

──この物語構造には、ビジネスにも応用できるシーンがたくさんあるのだとか。次回はぜひこの「英雄の旅」フレームワークについて、いろいろ教えてください!

(次回へ続く)