ドナルド・トランプ前米大統領は長年にわたり米国の同盟国を挑発してきた。北大西洋条約機構(NATO)の存在価値に疑問を呈し、加盟国に拠出金の拡大を求め、最近では、防衛費を十分に負担していない加盟国への防衛義務を果たさない可能性に言及した。今週、創設75周年を迎えたNATOの首脳会議が開かれる米首都ワシントンには、NATO加盟国や米国のパートナー国の首脳が集結する。そうした中で各国首脳は、最新の世論調査の結果、11月の米大統領選で勝利する可能性が高まったトランプ氏との「共通言語」を見いだそうと躍起になっている。各国首脳にとって喫緊の問題はウクライナ情勢だ。トランプ氏は、大統領就任前の段階でウクライナとロシアに和平協定を結ばせ、単独で戦争を終わらせると宣言している。ロシアがウクライナにNATO加盟の撤回と一部領土の割譲を求めているため、NATO加盟国からは、トランプ氏がウクライナに降伏するよう圧力をかけたり、同国軍への武器供与を停止して継戦能力をそいだりするのではないかと懸念する声も上がる。