「持ち物について質問されたとき、お伝えしていることがあります」
そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、リッツ・カールトンで磨いた「目の前の人の記憶に残る技術」を応用した独自の手法を実践したことで、わずか1年で紹介数が激増。社内で表彰されるほどの成績を出しました。
その福島さんの初の著書が記憶に残る人になるガツガツせずに信頼を得る方法が満載で、「人と向き合うすべての仕事に役立つ!」「とても共感した!」「営業が苦手な人に読んでもらいたい!」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、著者が大切にしている「持ち物に対する考え方」を紹介します。

持ち物について「なぜ、それを使っているんですか?」と聞かれたとき、一瞬で相手をがっかりさせるNG返答とは?Photo: Adobe Stock

「なんとなく」と言われると、がっかりする

 僕が勤めていたリッツ・カールトンの創業者ホルスト・シュルツは、意味を大切にしていました。レストランで使用しているテーブルやグラスなどに対して、つねに「どうして、これを使っているんだ?」と従業員に質問していたそうです。

 こだわり抜いて選んだグラスだって、1年も経てばその理由を忘れてしまいます。意味なんて忘れて、なんとなく使っているだけになってしまいます。

 意味を失ったものは、同時に価値も失ってしまいます。
「素敵な食器ですね。なぜこれを選んだんですか?」と聞いて、「いや、なんとなくです」と言われたら、がっかりしますよね。

 シュルツは忘れられた「意味」をもう一度考え、意味づけしなおすために、あえて問いかけているのです。ホテルを意味のある空間にしたかった。意味のある仕事にしたかった。彼はそんな志を持っていたのでしょう。

「かばん」について聞かれたら、こう答えています

 僕が使っているかばんは、大きな鍵つきのダレスバッグです。アメリカの政治家ジョン・フォスター・ダレスが来日した際に使用していたことで話題になり、日本独自の呼び方として世に広まりました。「ドクターズ・バッグ」とも呼ばれ、往診にくる医者が持っている大きなかばんとしても有名です。

 営業として経験も人脈もなかった頃は、大きなかばんが目を引き、「大きいバッグを持った人」という紹介のされ方をしたことも多々あります。単純に目立つかばんですが、ここにも意味が込められています。

 まず、メインは牛革ですが、細部にはクロコダイル革が使用されています。クロコダイルは噛んだら離しません。ビジネスのチャンスを「掴んだら離さない」という意味を込めるために、この素材が使われているものを選びました。

 そして「とてもクラシカルなかばんですね!」「鍵もついているんですね!」など、お客様に驚かれたとき、僕はいつもこう答えています。

「流行に左右されない、そんな息が長い営業でありたいと思いまして」
「大事な契約書をお預かりするので、鍵がないと不安なんです」

 そうお伝えすると、「そんな想いがあるなんて!」と、さらに驚かれます。

「意味」があることに、意味がある

「そんなの後づけじゃないか!」と思ったでしょうか。
 はい、そのとおりです。
 意味は最初からなくてもかまいません。後づけでいいんです。

 これは「嘘でいい」ということではありません。後から気づいたことでもいいから、「なぜ?」と聞かれたときに「なぜなら」と答えられる意味を持っておくことが大切です。その意味が、あなたを記憶に残る存在として印象付けてくれます。

 さあ、まずは目の前にある物から、さっそく自分なりの意味をつけてみましょう。

(本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。)

福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、お客様の「記憶に残る」ことを目指したことで1年で紹介数が激増し、社内表彰されるほどの成績となった。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSkyに入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。