実際にやってみたら、予想をはるかに超えた大きな拍手で、こちらがびっくり仰天。感染予防のため、声が出せない代わりに力いっぱい声援を送ってくださったんでしょう。ありがたいことです。実際は、久しぶりに靴を履いた足に感覚はなかったのですが、なんとか歩くことができました。

なんばグランド花月が
「伝説の一日」を迎えた

 2022年4月3日、なんばグランド花月は特別な日を迎えていました。吉本興業創業110周年特別公演「伝説の一日」の千穐楽です。それは、宮川大助・花子が3年ぶりに舞台に登場する日でもありました。マネージャーに「110周年特別公演に何らかの形で出たい」と伝えていたら、吉本新喜劇にゲスト出演することになったんです。漫才ではないけれど大切な、なんばグランド花月の舞台。

 普通に出るだけではつまらないと考え、車椅子をフェラーリ風に加工してもらって華やかに登場することにしました。役柄は、反社会勢力の大物です。

「どうもー!皆さーん」

 舞台に出て大きな声であいさつすると、会場からは大きな拍手です。みんな、待ってくれてはったんや。胸がいっぱいになりました。

「ここ3年ぶりやわあ。私のこと知ってはりますか?宮川大助・花子と申します。じつは、ちょっと入院してたんです。110周年特別公演ということで呼んでもらいまして、1人でいいって言ったんですけど、うちの夫もついてきて。うちの夫、ご存じですか?大谷翔平です。二刀流なんですよ。畑もするし庭掃除もするし、本職は何やっているのか知らんけど」といつもの調子でしゃべったら、お客さまがものすごく喜んでくださって。うれしかったですねえ。

 3月の4回目のPET検査(編集部注/がんの有無、広がり、転移を調べるもの)では、8カ所あった腫瘍が全部消えていました。天野先生からも「寛解状態になった」とお墨付きをもらい、ほっと安心していた時期です。地道なリハビリのかいあって、ゼロだった握力も10kgほどになっていました。

 しかし、少し先の自分を待っていたのは、「平穏」とは真逆の日々でした。