日本をはじめとするアジアでシェアを拡大している中国EVメーカー。実は、強さの秘訣は残業文化にあった。中国勢の“強み”を解明するとともに、日系メーカーが取るべき対抗策に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
3車種目となる新型EVを発表したBYD
「新型車は今後のBYDブランドを力強くけん引する重要な戦略モデルとして位置付けている」――。
6月下旬に東京都内で開かれた新車発表会で、中国の大手電気自動車(EV)メーカー比亜迪(BYD)日本法人の東福寺厚樹社長は新型EVについてこう説明した。
BYDオートジャパンは、6月からセダン型のEV「BYD SEAL(シール)」の販売を始めた。
2022年7月に日本市場に参入して以降、「ATTO3(アットスリー)」「DOLPHIN(ドルフィン)」と立て続けにEVを投入しており、シールは3車種目となる。
400万円前後で購入できる2モデルとは異なり、シールは528万円からと従来車に比べて少々値が張るが、トヨタ自動車のEV「bZ4X」(約550万円)や、日産自動車のEV「ARIYA(アリア)」(約660万円)に比べれば安い。
航続距離が長いのも特徴だ。日系メーカーが主に使用している三元系(ニッケル、マンガン、コバルトの3元素を正極に使用したリチウムイオン電池)よりもエネルギー密度が低いリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)を搭載しているにもかかわらず、フル充電で約640キロメートル走行できるとうたう。
24年度から政府のEV購入補助金が大幅に減額されたことで足元の販売台数は鈍化しているが、東福寺社長は「三つの異なるクルマを用意することで(日本の消費者に)EVの良さを体感してもらえる」と強気だ。
今後は、シールを反転攻勢の足掛かりとして日本でのシェアを拡大していく考えだ。
低価格がクローズアップされがちな中国メーカーのクルマだが、強みはそれだけではない。次ページでは、中国勢の強さの秘密と、次世代EVで反撃を目指す日本メーカーの対応策に迫る。