老後も「人に恵まれる人」と「孤立する人」、顔を見れば一発でわかる決定的な「差」とは?楠木新氏 撮影=今井一詞

定年前後の500人以上にインタビューを重ねてきた楠木新さん。老後も「人に恵まれる人」と「孤立する人」では、顔を見れば一発でわかる決定的な「差」があるという。ジャーナリストの笹井恵里子さんが話を聞いた。(著述家・元神戸松蔭女子学院大学教授 楠木 新、構成/ジャーナリスト 笹井恵里子)

定年後の男性はひとりで
過ごしていることが多い

 私は60歳で定年退職した後、定年退職者とおぼしき人がどこでどんな活動をしているかのウオッチングをいろいろな場所で続けてきました。

 地域の図書館、公民館、ハローワーク、スポーツクラブ、公園、スーパー銭湯、銀行や証券会社の窓口、書店、喫茶店、ネットカフェ、百貨店、映画館、カラオケボックス、パチンコ店など、定年退職者が立ち寄りそうな場所に足を運んで彼らを観察して、可能な場合には「私も定年になりましたが、最近リタイアされたのですか?」などと声をかけて、会話につなげました。

 そこで気がついたのは、男性は比較的ひとりで過ごしていることが多く、女性は家族やグループで活動している人が多いということです。ひとりで過ごす「孤独」は悪くはありません。しかし、人とのつながりを失う「孤立」は避けなければなりません。

身近な人と助け合える関係が
生き生きと暮らすためには大切

 特に会社愛が強い人ほど新たな対人関係を構築することを心がける必要がありそうです。退職によって関わる人がぐっと少なくなり、自分の名前を呼ばれるのは病院だけ、という人も珍しくありません。

 以前、社会福祉協議会でボランティアをしていた時に、80代の男性が相談に来ていました。彼が帰った後、相談を受けた女性職員が「もう少し早くから地元で活動していたら……」とつぶやいたのです。「どういう意味ですか」と私が尋ねると、彼女はこう答えました。

「私たちの立場では“助ける・助けられる関係”になってしまう。公的な団体とのやりとりよりも、身の回りの人とお互いに助け合えるような関係があることが生き生きと暮らすために大切です」と。井戸端会議のような“軽い付き合い”でいいですから、人と関わったほうがよいと私も思います。

 さて私はこの10年間、定年前から定年後の500人以上を取材してきましたが、老後も「人に恵まれている人」に特徴があることに気づきました。