定年退職した男性写真はイメージです Photo:PIXTA

定年を意識する50代、そして定年延長や再雇用でひとまず退職は先延ばしになったものの、遠からず訪れる退職時のことを思い、不安に苛まれる60代……「人生100年時代」などと言われ、歳を取っても働くのが当たり前とされるようになった昨今、私たちはこうした退職不安とどう向き合えばいいのか。その受け止め方によって、60代以降の新たな人生にイキイキと前向きに踏み出す人と、諦めや後悔の日々を過ごす人に分かれる。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

みんな何歳くらいで定年退職しているのか

 定年が近付いてくると思うと、この先どうすればいいんだろうと不安になるのはもっともである。

 かつては定年不安というと50代が中心だった。しかし最近は、企業は60歳未満の定年を定めることが禁じられ、65歳までの雇用確保が義務づけられ、70歳までの就業機会の確保も努力義務とされているため、定年への不安に脅かされる年代は、50代に限らず、60代後半まで広がっている。

 定年延長や再雇用の普及により、60歳以降の就業率は年々上昇している。総務省の労働力調査によれば、2021年における年齢層ごとの就業率は、60~64歳が71.5%、65~69歳が50.3%、70~74歳が32.6%、75歳以上が10.5%となっている。2011年と比べると60代の就業率の伸びが特に大きく、60~64歳でも65~69歳でも14ポイント以上伸びている(2011年はそれぞれ57.1%、36.2%)。

 こうして見ると、少し前の世代では60歳頃に第2の人生が始まるものだったが、最近では定年が延長されたり、再雇用やそのさらなる延長があったりするため、65~70歳頃に第2の人生のスタート台に立たされる人が半数ほどになっていることが分かる。

 このような数字が各種メディアを通して伝わってくるため、「定年後も、再雇用就労後も、みんな働くようになっているんだ」と思い込み、仕事から引退していることに引け目を感じる人もいるようである。