今年6月、天気業界大手ウェザーニューズの新社長に創業者の次男である石橋知博氏が就任した。石橋氏は、ヒューレット・パッカードからウェザーニューズに転じた異色の経歴の持ち主だ。今回ダイヤモンド編集部は、石橋新社長を直撃。就任の経緯や天気業界“独り勝ち戦略”を語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
アプリのダウンロード数が4200万を突破
社長が「まだまだ伸びしろがある」と強気な理由
――社長就任から1カ月がたちました。ここまでの手応えと今後の課題を教えてください。
この1年くらいは、自分が社長になることをイメージしながら取り組んできたので、何かが急に変わったということはありません。
いい形でバトンを引き継がせてもらったと思っています。少しずつですが増収増益を続けてきて、業績は安定しています。ここからぐっと上昇曲線を描けるかどうかが、重要なテーマになります。
2024年5月期の売上高は222億円です。これを“4桁億円”まで引き上げたいですね。そこまでいけば市場に認められ、注目されるようになる。そうすれば気象の新しい企業や人材が出てきて、業界全体を活性化できます。
――お天気アプリ「ウェザーニュース」は高い認知度とダウンロード数を誇っています。スマートフォン向けアプリがけん引するモバイル事業が頭打ちになってしまう懸念はありませんか。
今年、アプリのダウンロード数が累計4200万を超えましたが、まだまだ伸びしろはあります。ポータルサイトやiPhoneに搭載されているお天気アプリなど大きな競合がいるので、他社ユーザーを取り込めばまだまだこの事業を伸ばせます。現状の倍くらいはマーケットがあると思っています。
これまで手を付けられていなかった中小企業や個人事業者向けにも注力しています。われわれのサービスを活用してゲリラ雷雨など気象への対策を取れば、顧客企業は支払額以上のコストセービングや売り上げアップにつながります。
SaaS(Software as a Service)型ビジネスにシフトし、個人のアプリユーザーからインフラ系の大手企業に至るまで、あらゆる顧客層にサービスを展開していきます。
――モバイルだけでなく、航海気象や陸上気象も成長をけん引しています。
意外に思われるかもしれませんが、当社の祖業は航海気象です。航路の安全性や燃料消費の経済性、CO2排出量に関する環境性。この三つの観点から、お客さまが最適な航路を使えるようにサポートしています。年間で1万隻、4万5000~5万航海をサポートしています。
陸上気象では、鉄道や高速道路の国内シェアが高く、どちらも8割程度になります。雨や雪による交通規制や、電車を止めたり走らせたりする判断、復旧のオペレーションなどを支援しています。
――事業拡大に際しては、M&Aもあり得るのでしょうか。
次ページでは、石橋社長がM&Aの可能性や、入社の経緯を明かす。さらに、創業者の次男である石橋社長が世襲に言及している点にも注目だ。23年5月期の有価証券報告書によれば、ウェザーニューズは石橋家に関連する団体や個人が株式の2割程度を保有するオーナー企業だ。この保有比率を変えることはあるのか。社長を直撃すると、“意外な答え”が返ってきた。