積水ハウスはハウスメーカーで先駆けて世界最大ホテルチェーンの米マリオット・インターナショナルとタッグを組み、外資系ホテル開発をリードしてきた。だが、その積水ハウス肝いりの「Trip Base 道の駅プロジェクト」が大苦戦している。一方、永遠のライバルである大和ハウス工業は、米ヒルトンと提携。さらなる外資系ホテル開発に闘志を燃やし「逆転」を狙う。特集『狂乱バブル ホテル大戦争』の#15では、積水ハウス肝いりプロジェクトの大苦戦の理由、大和ハウスが「逆転」を狙うホテル事業の秘策を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
ホテル事業でも火花を散らす
大和ハウス工業と積水ハウス
1955年創業の大和ハウス工業と60年創業の積水ハウスは、共に関西を地盤とするハウスメーカーだ。主力の住宅事業では、熾烈な用地争奪戦と販売競争を繰り広げてきた。永遠のライバルとして常に互いを意識し、住宅事業だけでなく、賃貸アパートや開発事業などさまざまな分野でしのぎを削る。
売上高は、大和ハウスが5兆2029億円(2024年3月期)に対し、積水ハウスが3兆1072億円(24年1月期)。企業規模の大きさでは、大和ハウスに軍配が上がる。
一方で、外資系ホテルの誘致に関しては、積水ハウスが大和ハウスに先手を取って優位に立っている。
自社で手掛けた大阪・本町の再開発プロジェクトを巡り、積水ハウスは米スターウッドホテル&リゾート(16年に米マリオット・インターナショナルが買収)のラグジュアリーホテルを誘致し、10年に「セント レジス ホテル 大阪」を開業した。14年2月には京都・鴨川のほとりに最上級ブランドホテルを誘致して「ザ・リッツ・カールトン京都」をオープン。ホテル開発において積水ハウスは、マリオットと着実に関係を深めてきた。
その後、訪日外国人旅行客(インバウンド)が急増して、16年は年間インバウンド数が2000万人を初めて突破。今後もインバウンドの増加が見込まれることを受け、積水ハウスとマリオットは18年11月、全国にある「道の駅」を拠点にした旅行体験を提案する地方創生事業「Trip Base道の駅プロジェクト(以下、トリップベース)」を立ち上げた。
トリップベースでは、積水ハウスがプロジェクトマネジメントを担当し、積水ハウスやみずほフィナンシャルグループをはじめとした金融機関などが出資する特別目的会社(SPC)を設立。SPCが事業主となり、マリオットのミッドスケールブランドホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」を道の駅に隣接する形で展開している。
20年秋から順次開業したフェアフィールド・バイ・マリオットは、積水ハウス子会社が経営を担い、マリオットが運営する。展開するホテルは全国約30カ所、客室数は約2000室に上る。
そのトリップベースが今、大苦戦を強いられているというのだ。トリップベースに詳しいある銀行関係者は「もともとの想定よりパフォーマンスが悪い。しっかり立て直してほしい」と苦言を呈す。
なぜトリップベースは、大苦戦を強いられているのか。
次ページでは、トリップベース大苦戦の理由を解説する。積水ハウスと大和ハウスのホテル事業戦略の違いに加え、積水ハウスを追う大和ハウスの「大逆転」の秘策についても明らかにする。大和ハウスの「二兎を追う」独自戦略の中身とは。