まるでSF映画のように世界同時多発システムダウンの危機が襲った、マイクロソフト・ウィンドウズのシステム障害。原因は、米国のクラウドセキュリティー企業が配信したソフトにあった。日本航空やUSJなどで障害が発生した他、世界の航空便5000便以上が欠航するなど、各業界に甚大な影響を及ぼした。保険業界では、補償額が数百億ドル(数兆円規模)に達するとの警戒が高まっているという。AI時代のリスクを、どの業界の企業もいま一度、冷静に見直す時が来ている。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
日本航空やUSJでも不具合発生
世界同時多発システム障害の衝撃
7月19日、世界各国で大規模なITシステムの障害が同時発生した。国内では一時、LCCのジェットスター・ジャパンで搭乗手続きができず、欠航が相次いだ。また、日本航空でも航空券の予約など一部のサービスが利用できなくなった。
大阪府にある人気テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、一部のレストランやショップでレジが使えなくなる障害が発生したため、一時営業を休止(パーク自体の営業は継続)。また、日本マクドナルドでは全国およそ3割の店舗でレジに障害が発生した(原因は調査中で、世界規模の障害の影響かは不明と同社は説明)。
まるでSF映画のように、システムダウンで世界が同時に深刻な危機に陥る状況となった今回のシステム障害。原因は、米国のクラウドセキュリティー企業であるクラウドストライクが配信したソフトにあった。
筆者が注目したいのは、障害の発生から2時間ほどで、同社が修正ソフトを世界に配信したことだ。クラウドストライクは迅速に自社の瑕疵(かし)を認め、非常に迅速に対応した。この点は、被害をさらに拡大することを防ぎ、不幸中の幸いだったともいえる。
しかし当然ながら、今後も問題の詳細な究明や、負の影響を被った企業への対応が非常に重要だ。過去のシステム障害を踏まえて、今般の被害額を考えると、クラウドストライクの損害賠償額は膨れ上がる恐れがありそうだ。AI分野の成長は望ましいことである一方、こうしたシステム障害が増えることも予想される。IT業界に限らず、企業は自社のリスク管理能力が十分か否か、冷静に評価する必要に迫られている。