ダメな管理職は「部下が失敗する経験」を奪う。できる管理職なら、どうするか?
そう語るのは、これまで4300社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

ダメな管理職は「部下が失敗する経験」を奪う。できる管理職なら、どうする?Photo: Adobe Stock

「わかった気にさせる」が最悪

 優秀なプレーヤーだった人は、管理職になります。

 すると、つい自分の経験から、部下が失敗しないように指導してしまいます

 しかし、話としてわかっても、実際にやるのとでは大きな違いがあります。

 だからこそ、できる管理職には、「まず1回やらせてみる」ということを徹底していただきたいのです
 まず、「部下と競争しない」ということです。

「去年までうまくいっていた方法だったけど、その経験はもう通用しないのか」

 というように、現場を離れると、過去のやり方が古びることがあっという間に起こり得ます。
 最近は、「やる前に部下がしっかり納得するまで話をしましょう」「腹落ちしないと部下は力を発揮できません」などと言われることがあります。

 しかし、それは間違いです。
 まだ経験していないことをいくら話されても、部下には伝わりようがないのです

 管理職は、早く目標を与えて、「1回やらせてみる」それがもっとも部下を成長させるのです
 説得も納得も腹落ちも必要ありません。

「目に見えない変化をする部下」が成功の証

 組織レベルでも、「変わった気になるだけ」の間違いを犯すことがあります。
「変化」を正しく理解していない会社の特徴は、「人事異動や組織再編が多い」ということです。

 それは、なぜでしょうか。

 それらは、目に見えて形を変える「変化」だからです。
 変えた瞬間は、パッと見で何かが良くなったように見えます

 しかし、それはまさに「良くなったように見える」だけで、実際には何も変わっていません。
 部下やチームの「成長」は、目に見えるような変化ではありません。

 もちろん、目を見張るほどに自信がついたり、態度や話し方が変わったりするかもしれません。

 それに気づけるのは、リーダーや同僚など、身近にいた仕事仲間だけですが、「目に見えない成長」を感じ取れた瞬間は、まさにリーダーの仕事が成功したことの証なのです

 ただ立派なスーツを着て変化したように見える部下と、結果を出して自信にみなぎっているように見える部下。
 その2つは、まったく質が異なる変化です。

 ぜひ、管理職やリーダーの人には、後者の変化を感じ取れるまで頑張っていただきたいです。

(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年7月現在、約4300社の導入実績がある。主な著書にシリーズ累計140万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(いずれもダイヤモンド社)がある。