最新版の「鉄道の混雑率」に関する調査結果(国土交通省)を基に、独自にランキングを作成した。この記事では、混雑率ランキング【全国版】を紹介し、車両定員や運転本数の少なさなど、少し変わった事情がある路線について解説する。(乗り物ライター 宮武和多哉)
鉄道「混雑率」最新ランキング
通勤通学ラッシュがひどい路線はどこ?
8月2日、国土交通省は2023年度の「鉄道の混雑率」に関する調査結果を公表した。通勤通学時間帯における鉄道の混雑状況を把握するため、毎年度実施しているもの。
混雑率は、「輸送人員(乗客数)÷輸送力(一編成の定員)」で算出される。最も混み合う時間帯のうち、1時間の平均値。そのため、車両がコンパクトだったり、運転本数が少なすぎたりといった要因に左右され、意外な路線がランキング上位に入る。
この記事では、混雑率ランキング全国版を紹介し、車両定員や運転本数の少なさなど、少し変わった事情がある路線について解説する。
混雑率1位は日暮里・舎人ライナー
「なぜ地下鉄で建設しなかった?」
もはや大方の予想通りというべきか…。東京都荒川区~足立区を走る日暮里・舎人ライナー(赤土小学校前→西日暮里区間)が、4年連続で混雑率第1位(ワースト1)を記録した。
1位となった原因はズバリ車両定員が少ないことにある。この路線は高架上を走る「新交通システム」として建設されており、一編成(5両)の定員は252人。1編成で1000~1500人を運ぶ都心部の地下鉄よりも相当にコンパクトであり、乗客が集中すると、すぐにさばききれなくなる。
具体的に混雑率を計算してみよう。輸送のピーク時(日暮里・舎人ライナーの場合は朝7時30分~8時30分)には19本運行されるので、252人×19本=輸送力は4788人。対して同時間帯の輸送人員は8187人で、8187÷4788=1.70989975、四捨五入してパーセンテージ表示にすると171%となる。1時間で数万人を運ぶ路線だけでなく、「そこそこの乗客数+コンパクトな車両」の路線も、混雑率が高くなりやすい。日暮里・舎人ライナーは、その象徴のような路線だ。
なお、15~19年まで混雑率1位だった東京メトロ東西線は、今も最も混雑する区間(木場駅→門前仲町駅)で約6万人を輸送しているものの、コロナ禍前19年度の7.6万人には及ばず、混雑率は199%から148%に改善された。上位10位(ワースト10)にランクインすらしなくなった。
ここまで混雑するのなら、最初から日暮里・舎人ライナーを輸送力の高い地下鉄として建設した方が良かったと思う人も多いだろう。しかし、なぜそうならなかったのか。『最新!鉄道「混雑率」ランキング【全国版・ワースト34】』では、その謎を解説すると共に、ランキングの11~34位を一挙に公開している。