春のダイヤ改正「減便」はいつまで続く?乗客戻っても“コスト削減”のナゼPhoto:PIXTA

恒例の春のダイヤ改正が3月16日に行われた。振り返ればコロナ禍以降、各事業者は朝夕のラッシュから深夜時間帯、日中まで運転本数を大幅に削減した。だが、鉄道需要が回復する中、「アフターコロナ」に向けた輸送体制の整備が問題となるのは確実だ。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

通勤利用者の減少は
必ずしも悪い話ではない

 恒例の春のダイヤ改正が3月16日に行われた。JRでは北陸新幹線金沢~敦賀間延伸開業とそれにともなう在来線特急の再編、東北・山形新幹線への新型車両E8系の投入と最高速度向上。また、新型コロナ5類移行の急速な利用回復に対応して各新幹線が増発される。

 一方、「お客さまのご利用状況にあわせて、輸送体系を見直します」の名のもと、引き続き減便などの合理化も進む。

 社会問題にもなった京葉線通勤快速廃止(https://diamond.jp/articles/-/337958)の他にも、房総特急「さざなみ」「わかしお」「しおさい」の大幅減便。宇都宮線の「快速ラビット」と高崎線「快速アーバン」のほとんどが普通列車に変更され、上り列車は全廃された。

 振り返ればコロナ禍以降、各事業者は朝夕のラッシュから深夜時間帯、日中まで運転本数を大幅に削減した。鉄道は人件費や動力費、修繕費に加え、車両や施設など固定資産の資本費(減価償却費、利息)などの固定費が大きく、経費の削減が困難だ。

 列車本数を削減しても直接的な収支改善効果は限られるが、長期的な視点で見ると変わってくる。鉄道は最も運行本数が多い朝のラッシュ時間帯を基準に車両、人員を用意している。朝ラッシュピーク時間帯は日中の倍以上の本数があるため、保有する車両の半分は朝にしか使わない。つまり非常に効率の悪い資産だ。

 朝ラッシュ時間帯の運行本数を削減できれば、1両2億円程度(10両編成で15億~20億円)の車両が必要なくなり、乗務員も削減できる。つまり鉄道事業者は朝ラッシュ時間帯の減便を通じて長期的に固定費を削減しようとしているのである。

 鉄道事業者が過去何十年と朝ラッシュの輸送力増強、混雑緩和という割に合わない投資に追われてきたことを踏まえれば、コロナ禍による通勤利用者減少は(長期的には)必ずしも悪い話ではない。「理想的」なのは朝から晩まで同じ間隔、同じ本数を運行することだ(明治末の電車はそうだった)。

コロナ禍のダイヤ改正で
JRや大手私鉄が相次ぎ減便

 JR東日本は2022年3月のダイヤ改正で、山手線外回りをピーク1時間当たり21本から18本、内回りを22本から20本に減便。その他、多くの路線でも運行本数を1割程度削減した。また、中央・総武線各駅停車(千葉方面)は23本から19本、常磐線快速は19本から15本と2割程度減便した。

 大手私鉄でも2022年3月のダイヤ改正で、東武鉄道は朝ラッシュ上り、21時以降の夜間下りを1時間当たり3~4本削減し、残った列車も運行区間の短縮や種別の格下げを行った。小田急電鉄は看板列車であるロマンスカー「はこね」を平日上下45本から30本、土休日51本から39本に削減。特急用車両は通勤型車両より単価が高く、運行本数が減れば所有車両も削減できるため朝ラッシュの減便と同様の効果がある。