「とっさの質問にうまく答えられない」「『で、結局、何が言いたいの?』と言われる」「話し方やプレゼンの本を読んでも上達しない」……。そんな悩みを持つ方は、言語化の3要素である「語彙力」「具体化力」「伝達力」どれかが欠けていると指摘するのは、文章や話し方の専門家であり言語化のプロである山口拓朗氏。本連載では、山口氏による話題の書籍「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」の中から、知っているだけで「言語化」が見違えるほど上達するコツをご紹介していきます。
自分が伝えたいことと相手が必要としていることは違う
相手のニーズを把握するということは、「相手にとって必要な要素を見極める」ということ。ニーズがわかると、不要な要素をばっさり切り捨てることができるほか、相手に喜ばれる「要約」もできるようになります。
要約するときは、自分が捨てたいことを捨てるのではなく、あくまでも「相手にとって必要のないこと」を捨てる意識が大切です。コミュニケーションが天才的にうまい人はみな、これを自然にやっています。
自分の伝えたい内容を、本書の「STEP2」に従って具体化していくと、様々な情報を手にしている状態になります。八百屋ではなく、デパート状態。「野菜しか渡せません」ではなく、「食品も洋服も化粧品も家具も、なんでも渡せます」と、相手のニーズに応え放題の状態です。
さて、ここから何を渡せばいいでしょうか?
相手がお腹を空かせているなら食品を渡すと喜ばれるでしょうし、シャツが汚れていたら洋服を渡すほうがよいでしょう。
これを言語化に置き換えるとどうなるか。
相手が利益追求型のAさんであれば「利益がどれだけ出るか、数字で示したほうが理解されやすい」でしょう。一方、社会問題に興味があるBさんであれば「数字よりも社会的な意義を訴えたほうが理解されやすい」でしょう。
つまるところ、TPOに応じて渡す物を考えるしかありません。
難しいですよね。でも、具体化できていれば、取捨選択は格段にしやすくなります。ぱっと思いついた言葉を相手に無造作に投げるのではなく、具体化したものを見渡しながら厳選できるからです。ケーキ屋さんに行った時に「どれもおいしそうだけど、うちの家族が喜ぶケーキはどれだろう?」と考えて買うことに似ているかもしれません。
相手のニーズに応じて、具体化した情報を取捨選択できるようになると、伝わりやすさがぐっと高まります。
*本記事は、山口拓朗著「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」から、抜粋・編集してまとめたものです。