大量の睡眠薬盗難だけではなかった!市立横手病院に周辺薬局が従った「30年間の便宜」医薬品関連で問題が続く市立横手病院 Photo:医薬経済社
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 不正などと仰々しい表現で非難する以前の問題だ。端的に一言。

「みっともない」

 この言葉が今回の事案をよく言い表しているのではないだろうか。

 基幹病院である公立病院の医療従事者や職員、さらにはその家族の医薬品を、周辺薬局が服薬指導もせずに病院へ日常的に配達する――。医療機関から独立し、処方薬のダブルチェックを行う医薬分業の大義から大きく外れる「便宜」が数十年に渡り行われていた。本誌の現地取材によって、そんな事案が秋田県横手市内で発覚した。

 1時間に1列車限りの奥羽本線で秋田駅から東南に1時間17分。横手市は人口約8万人超と秋田市に次ぐ県内2番目の規模でありながら、石坂洋次郎の佳編「山と川のある町」の舞台としても描かれた自然豊かな風土が特徴の市だ。「住みやすい」と一定の評価も受けてきた。ただ、こと近年に関しては、印象悪化に突き進んでいる。

「不祥事の町、よこて」

 そんな標語がタクシー運転手から漏れるほど、ハイペースで公務員らが逮捕、摘発される事件が相次いでいるためだ。少なくとも21年からの約3年間で8人に及ぶ。今年だけでも3人。1月に横手市庁舎周辺で市民福祉部の20歳代女性職員が酒気帯び運転、4月には同部の30歳代女性職員がトイレの忘れ物のバッグから約13万円を抜き取ったことが判明した。

 そして、医薬品関連でも決して些末とは言えない事件が発覚する。基幹病院である市立横手病院(229床)で大量の睡眠導入薬がなくなったのだ。2種類の医薬品で100錠入り計7箱にも及んだ。3月28日に薬剤科の薬品保管庫に納入されたが、翌29日に紛失したことに気付いた。そして、横手病院は警察へ被害届を提出し、5月20日には事件を公表した。

 蓋を開ければ、内部犯行。50歳代の女性看護師が外来当直勤務時に盗んだもので、6月24日に検挙され、幕切れとなった。ただ、厳格な管理が求められる向精神薬を、出入り自由で施錠しない場所に放っておく病院側の杜撰な対応も浮き彫りとなり、医薬品管理に対する意識の低さを印象付けた。

 さて、そんな窃盗が話題となった横手病院。興味をもった本誌が現地取材に訪れると、窃盗とはまったく切り口の異なる何とも不思議な光景を目撃することになる。