歯医者「減少」時代#1Photo:Reza Estakhrian/gettyimages

歯科医師の過剰が世に知れ渡り、歯科医師はワーキングプア呼ばわりされた。しかし目下の歯科医療の現場では、すでに不足している歯科衛生士や歯科技工士に続いて、歯科医師も「将来の不足」が懸念されるようになっている。現状で「勤務5年目に年収1200万円稼げる」とされる、“狙い目”の職種に姿を変えた。特集『歯医者「減少」時代』(全26回)の#1では、歯科医師不足説について六つの根拠を詳らかにする。また、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士それぞれの需要と収入の実態に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

歯科医師が初めて減少
隠れた勝ち組に

 国内の歯科医師数が統計開始以来、初めて減少に転じた。

 歯科医院がコンビニエンスストアより多く、稼げないワーキングプアになった歯科医師もいると世間が騒ぐ中、国は歯科医師過剰を解消するべく歯学部の定員数や歯科医師国家試験の合格者数を絞り込んできた。すっかり不人気職種になって歯学部は定員割れが続出。歯科医師数が減少するのは当然の流れではある。

 歯科医師が減少したといっても、なお10.5万人と大台を超えたままで、人口10万人当たりの歯科医師数は84.2人。医療システムが異なる他国との比較は一概にできないが、単純に比べれば数は多い方だ。

 にもかかわらず、このタイミングで「歯科医師は将来不足する」という見立てが歯科医療界のほうぼうで上がるようになった。

 そもそも不足するかもしれない状況で、なお稼げない職種なのか。世間で定着したイメージに「いやいや勤務5年目で年収1200万円は稼げるんだけど」と、ある歯科医師は頭を横に振る。そして「ワーキングプアのイメージのままの方が競争相手が来なくて済むけどさ、このままだと人が足りなくて医療提供が追い付かなくなるよね」と頭数の不足を予見した。

 この将来の歯科医師が不足するという説にはどんな根拠があるのか。次ページでは、歯科医療に何が起きているかを明らかにする。隠れた勝ち組になっている歯科医師と共に、かねて不足が深刻化している歯科衛生士、歯科技工士の実態に迫った。