歯医者「減少」時代#3Photo:kumikomini/gettyimages

歯周病治療や小児歯科には国お墨付きの専門医がいるのに、インプラント治療には学会単位や民間の資格があるだけ。インプラントで頼れる歯科医師の判断材料は、患者が最も求めるものの一つであるにもかかわらずだ。特集『歯医者「減少」時代』(全26回)の#3では、お墨付きの「インプラント歯科専門医」がいまだに存在しない理由を明らかにする。患者はいつまで待てばいいのか――。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

大本命の「インプラント専門医」
補綴にも矯正にも先を越された

 インプラント治療を受けるために歯科医師を探すとき、インプラントに関連した資格を“いい歯科医師”を選ぶ判断材料にするのには難がある。複数の学会がそれぞれ私的認定した専門医や民間のメーカーが設けた資格などが数多く存在し、中にはセミナーを受講すれば簡単に取得できるようなものもあるからだ。

 国お墨付きの専門医資格を取得すると、医療に関して広告を出すことが認められる。端的に言えば、「広告可能な専門医」イコール「国お墨付きの専門医」である。インプラントを掲げた資格はあまたあるにもかかわらず、どれも広告可能な専門医の資格ではない。

 歯科専門医を公的に認定する専門機関として2018年、日本歯科専門医機構が設立された。このとき大本命として最も期待されたのが、国お墨付きで広告可能な「インプラント歯科専門医(仮称)」を作ることだった。

 インプラントや矯正は自費診療(自由診療)が主体で、国の取り締まりが及びにくい。中でもインプラントは治療を巡るトラブルが社会問題になったり、過激な宣伝行為がなされたりして、早急な状況の改善が迫られてきた。

「口腔外科専門医」「歯周病専門医」「歯科麻酔専門医」「小児歯科専門医」「歯科放射線専門医」の五つは専門医機構が設立される前から広告可能な専門医だったため、学会専門医から機構認定専門医へすぐに移行がスタート。資格更新のタイミングで試験や研修などを実施して移行を進んだ。

 対して、インプラント歯科のほか、補綴歯科、歯科保存、矯正歯科、総合歯科の五つは広告可能な専門医資格がなく、機構認定専門医の制度を新たに作ることになった。それぞれの領域にある学会と専門医機構が認定基準や研修制度などについて協議を重ねてきた。

 当初、この五つのうち最優先で資格認定されるのはインプラント歯科専門医だろうと多くの歯科医療関係者は見込んでいた。ところが、である。23年、入れ歯などを扱う「補綴歯科専門医」が先駆けて資格認定された(下表参照)。

 24年に入ると、今度は「矯正歯科専門医(仮称)」の認定が固まった。インプラント歯科はどんどん他に追い越されているのだ。これはなぜなのか。患者はいつまで待てばいいのか。