それまで家族のために仕事や雑事に追われ、自分の人生を振り返る余裕すらなかった。会社員なら定年、自営業なら子供に事業を譲る年齢になって「さあ、これから何をして生きていこう」。やることもすべきことも見失い、おまけに体力も日増しに衰えていく。

 若い頃は季節の変わり目で体調が悪くなることなど一度もなかったが、今はちょっとした気温、湿度、気圧の変化にも身体がついていかない。

「俺はあと何年元気でいられるのか」。そう考え始めると焦りが出てくるのです。頭のどこかで「あまり残された時間がない。急げ、急げ」と見えない時計が動き始めます。ですから、お店でちょっと料理を待たされても道路が少し渋滞しただけでも、「何時間かかるんだ」と大声を出すのです。

キレる老人に
不足している“栄養”とは

 肉体的な変化は精神にも大きな影響を及ぼします。それでいつもイライラしたり、理由もなく腹を立てたりするようになるのです。

 エスカレートすると電車で足を踏まれただけで相手に暴力を振るうようになります。まるで老いぼれた一匹オオカミのように攻撃的になるのです。

 男性ばかりではありません。世の中の多くの女性が更年期障害で苦しんでいます。50代になると少しずつホルモンバランスが変化し、精神が不安定になったり体調不良に陥ったりします。