長く生きていれば、嫌な人間と出会うこともあれば、不愉快な目に遭うこともある。体のふしぶしも思うようには動かなくなっていく。人生の辛いときに、心の平穏を保つ手助けとなる「魔法の4文字」を、美輪明宏さんが教えてくれた。※本稿は、美輪明宏『私の人生論 目に見えるものは見なさんな』(毎日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
イライラが吹き飛ぶ“たった4文字”の魔法
私も同じことを考えていました。2019年は地震や豪雨など大きな災害が続いたこともあり、余計にそう感じるのかもしれません。あちこちで多くの人たちが甚大な被害を受け、いまだに苦難にさらされています。
それなのに失態続きで大臣が次々と辞任するなど政界は相変わらず。これでは新聞を読むのもテレビの報道番組を見るのも嫌になります。国民の将来への不安は膨らむ一方で、日常生活でもイライラが募るばかりです。
せめて普段の会話の中だけでも気持ちが前向きになったり、ほっと救われたりする言葉はないものか、いろいろと探してみました。そして、見つけたのが「ルンルン」です。ランラン、リンリンではパンダの名前のようですし、レンレンは漢字で「恋々」となり大人びてしまいます。ロンロンではまるで麻雀。
やはり、「ルンルン」が一番しっくりきます。幼い子供たちが遊びに夢中になったりどこかへお出かけしたりする時に、必ず「ルンルン」と鼻歌を歌うのを思い出しました。年齢を問わずルンルン気分と言えば、心がうきうきと弾んだ状態を指すのです。
たった4文字の言葉ですが、使い方によっては大変な効果を表します。例えば、どこの会社にも「おまえはこんなこともできないのか」と部下に激昂する上司がいます。怒鳴り散らすだけではパワハラにもなります。
そこで叱責が済んだら、最後に「ルンルン」をつけ足せばいいのです。
すると、互いに感情的になって生じた気まずい空気が、この意外なひと言でふっと解消されます。きっと「ルンルン」というユーモラスな語感とイメージがそうさせるのでしょう。それが言葉の力です。