「税金逃れ」で海外移住する富裕層が背負う“大きすぎる代償”…不幸で哀れな「第二の人生」の実情Photo:PIXTA

お金持ちになりたい人は多いのに、お金持ちについて知っている人は少ない――。平均資産が30億円に上る超富裕層を顧客にプライベートバンク事業を展開するアリスタゴラ・アドバイザーズ会長の篠田丈氏に「本物のお金持ちの生態」を聞く短期集中連載。第4回のテーマは富裕層の節税。海外移住してまで「税逃れ」に励む富裕層は、不幸な後半生を送ることになるという。数多くの富裕層を相手にしてきた資産管理のプロが教える「お金より大切なもの」とは?(構成/田之上 信)

高すぎる相続税は
日本にとって「大きな損失」だ

 私の知る欧州の富裕層と日本の富裕層では、お金の使い方にかなりの違いがあります。欧州は富裕層文化が成熟していて、お金の使い方のバランスが取れているのです。

 自分たち家族のためや、一族が手がけるビジネスのためにお金を使うのは欧州も日本も基本的に同じです。しかし、欧州にあって日本にはないのが「社会のために使う」という文化です。欧州の富裕層には伝統的な「ノブレス・オブリージュ(財力、権力、社会的地位の保持には責任が伴うこと)」の考えが根付います。

 欧米には広く寄付文化が浸透していますが、特に欧州の伝統的富裕層は赤十字をはじめ、難病や貧困に苦しむ人たちに援助している非営利団体に相当額の寄付をするのが当たり前になっています。しかもその額は、私たち日本人からすると驚くほど高額です。

 実際、私の知人の一人は、南アフリカに広大な土地を取得し、そこで野生動物などの保護活動を行っています。

 また別の知人は、現代アートのアーティストの支援をしています。現代アートに限りませんが、多くの無名の芸術家はなかなか本業だけでは食べていけません。そこでアーティストと富裕層の人たちとの出会いの場を設けるためにいろいろなイベントなどを開いています。

 私の知る限り、日本でそこまでの意識を持って社会貢献をする富裕層は多くありません。日本の寄付文化も少しずつ変わってきているとは思いますが、なかには自己アピールのために寄付してる人もみられます。

 日本での寄付行為は、税金対策もあるでしょう。寄付金控除を目的としたものです。

 そもそも日本と欧州で大きく違うのが、相続税です。日本の相続税は非常に負担が大きいです。欧州は日本に比べて富裕層の相続税率が低く、ゼロの国もあります。