飲食店やコンビニの従業員に無茶な文句をぶつけ、街ゆく人々に怒鳴りつける高齢者──。彼らのイライラの背景に横たわる哀しい現実を、美輪明宏さんの目は捉えていた。「キレる老人」に堕ちず、心身とも健やかに生きるための秘訣とは?※本稿は、美輪明宏『私の人生論 目に見えるものは見なさんな』(毎日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
ウェイターすら待てない高齢者の「心の闇」
突然、顔を真っ赤にして怒りを露わにしたり、理由もないのに他人に声を荒らげたりする。そういう中高年の男性が多くなったということは、私も時々耳にしています。
でも、昔から「年を取ると気が短くなる」と言われていますから、今に始まったことではありません。言葉は良くないかもしれませんが、以前から「キレるおじさん」はどこにでもいたのです。
ご存じの通り、日本は急速に高齢化が進んでいます。現代は4人に1人が65歳以上です。単純に高齢者の人口が増加したことで、それに伴い短気な人間が増えたということでしょう。
さらに、今は情報化社会。どんな出来事でもLINEやツイッター(現・X〈エックス〉)といったSNSで瞬時に拡散される時代です。誰かの「キレられた~」のつぶやきに「私も、私も」と賛同すれば、怖いおっさんがあたかも全国にいるように思われても仕方ありません。
では、年を取るとなぜ短気になるのでしょうか。原因はいくつかあります。50代後半から60代、70代の男性が怒りやすくなるのは、将来の不安から来ているのです。